◎「つれ(連れ)」(動詞)

T音の思念性とU音の遊離感のある動態感により現在 (現(ゲン)に在(あ)り)の意) と思念が融合するような動態、時間的・空間的連動・同動、を表現する。活用語尾のR音はそうした情況があることを表現しますが、E音の外渉性は客観的主体の自動も他者へ他動も表現する。

他動表現―何か(対象)に対しそれとの同動(接続・連続・同行)を持続的に進行させること。「彼女を連れて…」などという場合の「つれ」はこれ。「雁つれ」(雁を同行させ)。「四・五人つれ」(四・五人を同行させ)。

自動表現―何か(主体)に何か(対象)との同動(接続・連続・同行)が持続的に進行すること。「行くにつれ山が見えてくる」などという場合の「つれ」はこれ。「に」という動態を形容する語が入り動態が同動する。「雁つれ」(雁が連なって)。「四・五人つれ」(四・五人が連れ立って)。

「二人づれ」「家族づれ」などの場合「つ」が濁音化しますが、これは「の」が入り「ん」のように退行化しつつ無音化しているということでしょう。

「人あまたつれて花見ありきしに(歩きしに)…」(『徒然草』)。

「『エゝ腹立や。また其つれな事をいふ』」(「狂言」『どもり』:ものごとのつれ。同種・同類のことや、それにかんした、それにつながるそれに関連したことを言う)。<br/>

「衣服の綺羅も世につれて…」(『心中宵庚申』)。

・「つれもなし」「つれなし」は、同行者・同動者がないわけではなく、同動感がない。ある対象がつれなければ、その対象に、こちらに対応し同動しているような反応や変化がない。

「秋の田の穂向きの寄れる片寄りに我れは物思ふつれなきものを(都礼無物乎)」(万2247:つれないのにひたすら思っている)。

 「さて(庭につくった)雪の山、つれなくて年もかへりぬ」(『枕草子』:溶けて変形するということもなく年が明けた。「行くにつれ海が見えてくる」などという場合のその「つれ~」が起こらない)。

 

◎「つれ(攣れ)」(動詞)

「つり(攣り)」の客観的主体による自動表現。これにより「ほつれ(解れ)」「もつれ(縺れ)」という動詞がある。活用語尾E音化により可能を表現する「(魚が)釣(つ)れ」といった表現はもちろん別にある。

「『女は髷(まげ)まげに結ふと、こゝが釣れますから誰でも禿げるんですわ』と少しく弁護しだす」(『吾輩は猫である』(夏目漱石))。