◎「つるばみ(橡)」

「つりうりはみ(吊り瓜食み)」。この場合、「はみ(食み)」は口に入れているということです。吊られながら大口を開けて食べきれない瓜を口に入れているような、の意。形態がそのような印象なのです(実を覆う椀状の殻斗が、まるで、吊られながら大口を開けて食べきれない瓜(うり)を口に入れているようだということ)。これはある種の木の実の名であり、別名「どんぐり(団栗)」(その項)。

「紅(くれなゐ)はうつろふものぞ橡(つるばみ:都流波美)のなれにし衣(きぬ)になほしかめやも」(万4109:橡(つるばみ:都流波美)で染めた衣)。

「橡(つるばみ)の衣(きぬ)は人皆事なしと言ひし時より着欲しく思ほゆ」(万1311:橡(つるばみ)で染めたものなら無難(ぶなん)だと皆が言うので着たい)。

「橡 ……和名都流波美 櫟実也」(『和名類聚鈔』:これは調度部・染色具にある。ドングリは染色にもちいる)。

「衣の色いと濃くて、 橡(つるばみ)の衣(きぬ)一襲(ひとかさね)、小袿(こうちき)着たり」(『源氏物語』:「橡(つるばみ)の衣」は喪服も意味した)。

「おそろしげなるもの つるばみのかさ、…」(『枕草子』)。

 

◎「つるび(交び)」(動詞)

「つる(蔓)」(その項)の動詞化。互いに絡み合い一体化するような動態になること。特に動物の性行為を言う。また、俗語表現として、意を通じ合って何かを行っていることを不快感や非難めいた心情で表現する場合にも用いられている。「つるみ」とも言う。

「孳尾 …………鳥交接俗云都流比」(『和名類聚鈔』)。

「婚 …ツルブ」(『類聚名義抄』)。

「他(あだ)の烏(からす)遞(たがひ)に来(きた)りて婚(つる)び姧(かた)む」(『日本霊異記』:番(つがひ)状態になった雄のカラスが餌を探しに行き、巣で子を守っていた雌のカラスが、入れ違いに来た他の雄のカラスと婚(つる)んだ)。