◎「つゆ(露)」

「うつゆ(現揺)」。「う」は消音化した。「うつ(現)」は明瞭・明晰な現実感を表現する。濁りない明瞭な現実感があり不安定に揺れる印象のもの。大気中の水分の凝結した水滴であり、特に、早朝の草葉のもの。美しいがすぐに消えてしまうはかないもの、といった印象にもなる。

「…露こそば 朝(あした)に置きて 夕(ゆふべ)は 消ゆといへ…」(万217)。

「ありさりて後も逢はむと思へこそ露(つゆ:都由)の命も継ぎつつ渡れ」(万3933)。

「露 ………降則物無不美盛矣 和名豆由」(『和名類聚鈔』)。

 

◎「つゆ(汁)」

「ちふゆ(ちふ湯)」。「ちふ」は「~といふ(~と言う)」の慣用的略表現。その場合、「~といふゆ(~と言ふ湯)→つゆ」は、「湯(ゆ)」には、通常、なんらかの味付けがなされている。単なる加熱された水であったとしても、「~といふゆ(~と言ふ湯)→つゆ」になることにより味が加わることもある。つまり「~といふゆ(~と言ふ湯)→つゆ」は、湯であるが単なる湯ではなく、~という状態になっている湯です。その状態にすることは食用にするためにおこなわれ、たとえば、シイタケという状態、あるいは、コンブという状態などになる。ここに塩や醤油が加わったりもし、ここにミツバでも加われば「みつばのつゆ」にもなり、さらに蕎麦(そば)が加われば「蕎麦のつゆ」にもなる。味噌が入っても「つゆ」になる。この語は「汁 …………又、今俗京阪ハスマシ及ミソ汁共ニ露ト云也。女詞ナルベシ。今江戸ニテ露ト云ハスマシ也。味噌汁ヲオミオツケト云也」(『守貞謾稿』後集一)とされる語であり、京阪の女詞であるらしい(台所で言われた語ということでしょう)。京阪で、女詞として、味噌汁もすましも「つゆ」と言う。江戸では「つゆ」と言ったらすましであり、味噌汁はオミオツケ。この「つゆ」には、だし汁、の意味もあるわけであり、煮汁や果汁を「つゆ」と表現したりするのはその応用。

「加減見る露二ツ打舌の音」(「雑俳」『歌羅衣』)。

「(穢細工(きたなざいく)の料理をしようと言いだして)…『さうすると、旦(だん:旦那)が新しいおまるをずつと持つて出て、穢(きたな)さうに盖(ふた)を撮(つま)んで傍(わき)へ置くと、其中が汁澤山(つゆだくさん)の鶏卵(たまご)のふはふはさ』」(『浮世風呂』)。