◎「つや(艶)」

「つゆうは(露上)」。表面に露(つゆ)の光沢や水々しさを感じる印象を表現したもの。ものだけではなく、ものごと(「つやのある声」)にも言い、女のしぐさに艶(つや)があれば色っぽかったりもし(男の関心をひく光沢があるということでしょう)、「つやを言う」が相手が光を感じるような世辞を言うという意味にもなる。つまり、さまざまな意味で光沢が感じられるのですが、それがものやことにおいて実態なく表面的である印象もともなっている。

「濃き衣(きぬ)のいとあざやかなる、つやなど月にはえて…」(『枕草子』)。

「じつは心に思ひはせいで、あだなほれたほれたの口先きはいかゐつやでは有はいな」(「浄瑠璃」『仮名手本忠臣蔵』)。

 

◎「つめたし(冷たし)」(形ク)

「つまあへいたし(褄合へ甚し)」。「い」は無音化した。「いたし(甚し)」(その項)は甚(はなは)だしいこと。この場合の「つま」は襟(えり)の下部あたりを意味している。そのあたりをさかんに合わせる。寒いからである。「さむし(寒し)」は体温の低下の不快感・憂鬱感を表明するが、「つめたし(冷たし)」は外部環境や、さらに、応用発展的に、外的対象の温度が、体温と相対的に、そして相当に、低いことを表明する。

この語の語源は「つめいたし(爪痛し)」とされることが非常に多い。冷却すると爪が痛いからだそうであるが、痛いであろうか。

「さむく冴えこほりて、うちたる衣(きぬ)もつめたう、扇(あふぎ)もちたる手も冷ゆともおぼえず」(『枕草子』)。

「いとつめたきころなれば、さしいでさせ給へる御手のはつかに見ゆるが、いみじうにほひたる薄紅梅なるは、限りなくめでたしと…」(『枕草子』)。