◎「つもり(積もり)」(動詞)(1)
「つみおもり(積み重り)」。「つみ(積み)」は自動表現。何かが同動化し(積(つ)み)重みが感じられる状態になること。「雪がつもる(積もる)」。恋が「千重につもり」などという表現もある。つまり、ものだけではなく、こともつもる。
「四十千眞珠・瓔珞・及天曼陀羅花雨、積(ツモレ)ること膝までに至せり」(『金光明王最勝王経』平安初期点:「雨」は、降(ふ)り、と読まれたりする)。
「…寝(ぬ)る夜おちず 夢(いめ)には見れど うつつにし 直(ただ)にあらねば 恋しけく 千重につもりぬ(都母里奴)」(万3978:思いが積(つ)もるということでしょう)。
「…雪のかきくらし降るに、いと心ぼそく見出だすほどもなく、白うつもりて、なほいみじう降るに…」(『枕草子』)。
「あさゆふの 身にはそへども あらたまの としつもりゆく われそかなしき」(『兼輔集』:年や月もつもる)。
「月ごろのつもりを、つきづきしう(もっともらしく)聞こえたまはむも、まばゆきほどになりにければ…」(『源氏物語』:この「つもり」は、積もり。「日(ひ)ごろ」は、あの日、あの日…、と日(ひ)の気(け)の覚えのある時間的経験期。「月(つき)ごろ」は、あの月、あの月…、と月(つき)の気(け)の覚えのある時間的経験期(「日(ひ)ごろ」なら、あの日、あの日…、と日(ひ)の気(け)の覚えのある時間的経験期。「ひごろからあの人は…」)。月ごろなにが積もっているのかというと、その経過とそこでの思い)。
「(桐壺は)朝夕の宮仕へにつけても、人の心をのみ動かし(周囲の人々を動揺させ。(本人はそんな気はなくても)周囲の人々が無視できない存在となり)、恨みを負ふつもりにやありけむ(その人たちの恨み(嫉妬)が積もったのか)、いと、あつしくなりゆき(病(やまひ)がちになり)…」(『源氏物語』)。
◎「つもり(仕上げ)」
「つみおり(詰み織り)」。「つみ(詰み)」は動態(作業)が凝縮することですが、最終的な仕上げに入っていることを意味する。「つみおり(詰み織り)」は織物の最終仕上げたる織り。この語は、酒宴の終了、その最後の盃、を意味するものであり、そうした場で用いられた特殊なものですが、限度、や、限り、といった一般的な意味で用いられることもある。。この語は、一般に、「つもり(積もり)」として語られる。酒宴として盃が積(つ)もるという意味らしい。しかし、盃が積もっても終了・仕上げは意味しない。
「さかつき(盃)の津守(つもり)あんする(案ずる)今宵かな」(『雀子集』:月がみごとで酒宴が終わらないということでしょう)。
「『新さん、じゃ私これでおつもりよ』とお国は猪口(ちょく)を干して渡した」(『新世帯』徳田秋声)。
「銀もつかふつもり有物ぞかし」(「浮世草子」『俗つれづれ』:限度。銀をつかうつもりがある→つかう意図がある、という意味ではない)。