◎「つめ(爪)」

「つめはえ(詰め生え)」の音変化。「つめ(詰め)」は凝縮させること。この場合は、指先の多少丸みを帯びた平面状の角質部分の丈(たけ)を短くすること。「はえ(生え)」(その項)は動態進行に意外な新鮮感があることであるが、この場合は、その角質部分が発生し成長している。「つめはえ(詰め生え)」は、その指先の多少丸みを帯びた平面状の角質部分が、絶えず、これを切り取るなり削るなりし、その丈を縮め、そして成長し伸び、また縮め、また伸び、また縮め…を絶えず繰り返す身体部分であることによる名。人以外のものでも、類似した身体部分はそう言う。

「ここに八百萬(やほよろづ)の神共に議(はか)りて、速須佐之男命(はやすさのをのみこと)に千位(ちくら)の置戸(おきど)を負(おほ)せ、また髭を切り、手足の爪も抜かしめて、神逐(かむや)らひ逐(や)らひき」(『古事記』)。

「天(あめ)の下 四方(よも)の道には 馬の爪(つめ:都米) い尽くす極み 舟舳(ふなのへ)の い果つるまでに…」(万4122)。

「爪甲 ……和名豆女 手足指上甲 和名豆女乃古布」(『和名類聚鈔』:「古布(コフ)」は、凝生(こふ)、か。甲(カフ)の音(オン)にしては音(オン)がことなる)。

 

◎「つめ」

「つまへ(端辺)」。存在動態の凝縮したそのあたり、の意。

「大橋のつめ(頭)に家あらばま悲しく独り行く子に宿貸さましを」(万1743:これは橋の近辺、すぐそば、の意でしょう。橋の上、その末端に家があるのは不自然)。

「都合その勢二万八千余騎木幡山うち越えて宇治橋のつめにぞ押し寄せたる」「橋の両方のつめにうつ立つて矢合はせす」(『平家物語』)。