◎「つむぎ(紡ぎ)」(動詞)
「つみふき(摘み拭き)」。「つみ(摘み)」「ふき(拭き)」はそれぞれの項参照。「つみ(摘み)」と「ふき(拭き)」を同時に行うような動態になることですが、具体的には、蚕の繭や綿花の綿毛の繊維をつまみ引き出し、これを指先で揉み撫でねじることを繰り返し継続していくような動作をする。つまり製糸する。この作業は、「より(撚り)」をかける、とも言う。糸繰車を用いても行う。真綿からひいた糸、また、屑繭からひいた絹糸で織った布やそれによる着物も「つむぎ(紬)」と言う。
「鍋 ……紡車収糸者也 字亦作楇 漢語鈔云 都美 唐韻云紡 …豆無久 続也…切韻云績 …宇無」(『和名類聚鈔』)。
「綜 …………ツムク」「績 ………ウム……ツムク」(『類聚名義抄』)。
◎「つむじ(旋風)」
「つむし(錘風)」。紡績具たる「つむ(錘)」(その項)には回転の印象がある。「し」は擬音に由来し風を意味する→「あらし(嵐)」「しまき(風巻)」。「つむじ(旋風)」は風が巻くこと、巻く風。「つむじかぜ」「つじかぜ」ともいう。頭頂部あたりの毛が巻いて生えている印象の部分をいう「つむじ(旋毛)」はこれの応用表現。
「飊 …回飊巻高樹…飊暴風従下而上也… 和名豆無之加世」(『和名類聚鈔』)。<br/>
「廻毛 ……一云旋毛 和名都無之」(『和名類聚鈔』:この語は巻十一・牛馬部にある)。
・「つじ(辻)」も原形は「つむじ(辻)」と言う。
◎「つむり(瞑り)」(動詞)
「つみふり(摘み振り)」。「ふり(振り)」は何かの様子をすること(→「見て見ぬふり」)が動詞化している。「つみふり(摘み振り)→つむり」は、摘む様子をする、ということですが、芽(め)と目(め)がかかった表現がなされ、「目をつむる」という言い方で、芽(目)を摘んだ、目(芽)を摘み取り無くしたような様子を現すこと、すなわち、見なかった(見ない)様子を現すこと、を意味する。「現実に目をつむる」。これが、瞼(まぶた)を閉ざし眼球に光が入ることを遮断することも意味するようになった。「つぶり」とも言う。表現としては、「目をつむる」、「目をつぶる」という表現しかしないでしょう。