◎「つむ(錘)」

「つみゆ(摘み揺)」。「つみ(摘み)」は指先でそれに特異的な動態をすることであり(→「つみ(摘み)」の項)、この場合は糸に縒(よ)りをかけている。糸は縒(よ)りをかけつつ回る。その回転が「ゆ(揺)」(→「ゆり(揺り)」:動態の履行構成力が弛緩・動揺する)である。すなわち「つむ(錘)」は「つみ」を行い、縒(よ)りをかけ、回転する道具。糸を紡(つむ)ぐ装置の部品でありそれは糸を巻くと同時に糸に縒りをかける働きをし「をまき(緒巻)」とも言う。

「紡車 ツミ 収糸具也 私云俗ツム」(『色葉字類抄』)。

 

◎「つむ(大船)」

「つうめゐ(津埋め居)」。「つ(津)」は船が停泊するところであり、後世で言えば「みなと(港)」のようなものである。そこを埋め尽くすようだ、という表現。大きな船を意味する。

「船舶(つむ)を聚(あつ)めて軍(いくさ)の粮(かて)を運(はこ)ぶ」(『日本書紀』)。

「舶 …ツム 今云オホフネ」(『類聚名義抄』)。

 

◎「つむがりのたち」

「つむゆかり(積む縁)の大刀(たち)」(深い縁(ゆかり:他にない、その主体の社会経験関係)のある太刀)。これはヤマタノヲロチの体内にあったという。別名「くさなぎのたち(草薙太刀)」。

「…見(み)たまへば、都牟刈(つむがり)の大刀(たち)在(あ)りき」(『古事記』)。