◎「つまごみに」

「つまがゑふむゐに(妻が笑踏む居に)」。「がゑふ」の連音が「ご」になっているということ。「つま(妻・夫)」はその項参照(7月7日・「つま」という言葉は二人で一の世になる最親の人を意味し、古代では男も女も「つま」と言った)。「つまがゑふむゐに(妻が笑踏む居に)→つまごみに」は、妻(つま)の笑(ゑ)を踏んで居られるように、ということであり、「ふむ(踏む)」は実践すること、そうなることを意味する。これは『古事記』の歌(歌謡1)にある表現であり、『日本書紀』(歌謡1)では「つまごめに」が伝承されている。この『日本書紀』のものは伝承を誤伝と思い「こめ(籠め)」にしたものでしょう。「こみ」では「混み」(「電車が混む」)になりかねない。もっとも、『日本書紀』の「め」は原文「昧」という微妙な字で書かれている。

「八雲(やくも)立(た)つ 出雲(いづも)八重垣(やへがき) つまごみに(都麻碁微爾) 八重垣(やへがき)つくる その八重垣(やへがき)を」(『古事記』歌謡1:これは一般に行われている読みによる漢字表記。この歌にかんしては「いづも(出雲)」の項(2020年1月17日)・下記に一部再記)。

 

(一部再記)

『古事記』に「やくもたつ 出雲八重(いづもやへ)がきつまごみに 八重(やへ)がきつくる その八重がきを」(『古事記』歌謡1)という歌がある。

◎ 「やくもたつ」―「やけいもたつ(家気妹立つ)」。家なる妹(いも)、遠く離れた家にある妹(いも)、が立つ(現れる・感じられる)。

◎「いづもやへがき」―「いづるもやへがき(出づるも八重が来)」。遠く離れても、遠く離れた家にある妹(いも)が幾重も現れ感じられる。「やへがき(八重が来)」の「が」は所属を表現する。主格を表現する助詞というわけではない。

◎「つまごみにやへがきつくる そのやへがきを」。「つまごみに」に関しては上記。つまごみにつまを思う思いが幾重にもなったその八重垣(やへがき)を......(作る)。「八重が来(やへがき)」と「八重垣(やへがき)」がかかっている。

 

◎「つまごもる(枕詞)」

「や(屋)」に掛かる枕詞ですが、地名「をさほ(小佐保)」にも掛かる。「つまこめもる(妻籠め守る)」→「を(男)」ということ。これが「や(屋):家」にも掛かる。

「つまごもる 屋上(やかみ)の山(島根県江津市?)の 雲間より 渡らふ月の…」(万135)。

「…つまごもる 小佐保(をさほ:奈良県佐保川市)を過ぎ…」(『日本書紀』歌謡94)。