「といむま(戸忌む間)」の音(オン)変化。戸(と:間(ま)を閉ざし関係を遮断するもの)が忌まわしいものである関係にある者、の意。つまり、間(ま)はあるがそこには間を閉ざすものの無い、一つの心的空間・一つの世界にある二人をいう。後世では夫婦関係にある一方たる男が他方たる女を「つま」と呼ぶようになっていきますが、古くはそうした心的同一空間にあるような男女の双方が双方を「つま」と言った。すなわち、男から女も、女から男も、相手を「つま」と表現した。
「…吾(あ)が大国主(おほくにぬし) 汝(な)こそは 男(を)に坐(いま)せば ………若草の 妻(つま:都麻)もたせらめ 吾(あ)はもよ 女(め)にしあれば 汝(な)を除(き)て 男(を)は無し 汝(な)を除(き)て 夫(つま:都麻)は無し」(『古事記』歌謡6:「除(き)て:岐弖」は、措(お)きて、の、お、が無音化しているもの)。
「八千矛(やちほこ)の 神の命は 八島國(やしまくに) 妻(つま:都麻)枕(ま)きかねて…」(『古事記』歌謡2:妻を得たいと…)。
「鴨すらもおのが妻どち求食(あさり)して後(おく)るる間爾恋ふとふものを」(万3091:「間爾」は、ほどに、や、あひだに、と読まれていますが、これは、ひまに、でしょう。「ひま」は、なにもすることがない、退屈な、間(ま)、という意味ではありません。持続する動態にふとひとときできたその動態のない小さな時間域→「閒 ………ヒマ」(『類聚名義抄』:「閒」と「間」は事実上同字と言っていい字)、「ひまなき御まへわたりに…」(『源氏物語』)。