◎「つべたまし」(形シク)

「つみえたまひあし(罪得給ひ悪し)」。「たまひ(給ひ)」はその項参照。罪がある状態を発生させるような情況になり良くない、ということですが、罪を生じさせるわけではありません。罪があるのではないかと不安な状態にさせる。そんな状態にさせ「あし(悪し)」であることが、「つみえたまひあし(罪得給ひ悪し)→つべたまし」。いかにも、人を冷酷に問い詰め責め、その罪を探っているような印象であったりし、それを見たり聞いたりすると罪ある状態になりそうな印象であることも表現する。「つべつべし」(形シク)、「つべらしい」(つべられ悪し。罪得られ悪し)という表現もある。

「大臣、かしこき行なひ人、葛城山より請じ出でたる、………さまざま聖(ひじり)だつ験者などの、………いと多く参る。………この聖も、丈高やかに、まぶし(目つき、まなざし)つべたましくて、荒らかにおどろおどろしく陀羅尼読むを、『いで、あな憎や。罪の深き身にやあらむ、陀羅尼の声高きは、いと気恐ろしくて、いよいよ死ぬべくこそおぼゆれ』とて…」(『源氏物語』)。

「三四日ばかりありて文あり。あさましうつへたましと思ふ思ふ見れば…」(『蜻蛉日記』:これは、漠然と、なんだかいやな感じがする、といったような意味か)。

「楚ては余りきふう(きぶく:きびしく)つへつへしうて、殺されたそ」(『史記抄』)。

「酷吏はきつくつへらしく人にあたる事か惨酷なる者を云ふ」(『史記抄』)。

 

◎「つぼ(壺)」

「つふほほ(壷頬)」。「つふ(壷)」は容器名である(その項・6月25日)。「つふ」を行った際の(→「つふ(壷)」の項参照)頬のようなもの、の意。「つふ(壷)」であり、ふっくらとしている。口が小さく内部がよく見えない。酒を入れることに利用することが多かったようです(口が小さく、注(つ)ぐにも便利ということか)。薬なども入れた。痰壺にも使ったかもしれない。古くは「つほ」と清音でも言われた。口の小さい容器であり、完全に封鎖されるわけではないが一定域に入ったものやことや入ることも比喩的に「つぼ」と言う。「思ふつぼ」。「つぼにはまる」。

古く、寝殿造の建物に囲まれた状態になった土地や建物と建物の間の土地なども「つぼ」と言った。「西東(にしひんがし)は渡殿(わたどの)にて、わたらせ給ひ、まうのぼらせ給ふ道にて、前は壺なれば、前裁(せんさい)植ゑ、笆(ませ)結ひて、いとをかし」(『枕草子』)。

土地の面積単位たる「つぼ(坪)」は、単位として封鎖的になった地域、という意味でそう言われるのであって、「つぼ(坪)」という語は縦横の長さ、すなわち面積、を表現するわけではない。格子のます目なども「つぼ」と言う。

「なかなかに人とあらずは酒壷になりにてしかも酒に染みなむ」(万343)。

「壺 ……和名都保 所以盛飲也 ……一名𢀿 ……瓢爲酒器也」(『和名類聚鈔』:瓢箪(ひょうたん)形の酒器だと言っている)。