◎「つぶつぶ(1)」

「つブンつブン(つ分つ分)」。「つ」は、一(ひと)つ、二(ふた)つ、など、個数を、単位における全体の中における規模を、確認表現するそれ。「ブン(分)」は割り当てられたそれ(→「こっちはA君のぶん。こっちはB君のぶん」。「各自の取り分(ブン)」)。「つブンつブン(つ分つ分)→つぶつぶ」は、全体の中の、一つ、また一つ、と、確認される、それら一つ一つに割り当てられた内容たるなにごとかが思念的に確認されていることが表現される。

「さまざま悲しきことを、陸奥紙五、六枚に、つぶつぶと、あやしき鳥の跡のやうに書きて」(『源氏物語』:ひとつひとつ書いていった)。

「『……こよなう情けなき人の御心にもはべりけるかな』と、つぶつぶと泣きたまふ」(『源氏物語』:ひとつひとつを確認するように泣き、泣きつづけた)。

「いかゞはすべきなど萬に思ふ事のみ繁きを、いかでつぶつぶといひしらするものにもがなと思ひ亂るゝ時」(『蜻蛉日記』:ひとつひとつ念をこめて)。

「胸つぶつぶとはしるに」(『蜻蛉日記』:心臓の鼓動がひとつひとつ独立するように高鳴る)。

「わりなく出で給ひにし折(のその)、心地の思ひ出でられ給ふに、いといみじう、胸ふたがる心地し給ひて、涙のつぶつぶと落ち給ふを、大将、昔おぼし出で給ふなめり、と見給ふ」(『宇津保物語』:「粒(つぶ)」の、すなわち小さな球体状の、涙が落ちているような印象を受けるが、そうではない。思い出一つ一つが次々と浮かび、それに応じ涙が落ちる)。

「(羽根を)毟(むし)り果てておろさせければ刀に随ひて血のつぶつぶと出で来けるを拭ひ拭ひ…」(『宇治拾遺物語』:切るつど血が現れ流れた。血が粒(つぶ)となって、球状の小体となって、つぎつぎと出てきているわけではない)。

「傍ニツブツブト疱瘡ノ出ル事也」(『病名彙解』:一つ一つが独立存在として現れる)。

「(鯰(なまず)を)つぶつぶと切て、鍋に入れて煮て…」(『今昔物語』:鯰の切り身一つ一つを独立的に表現すればこうなるわけですが、切断動態を擬態で表現すれば「ぶつぶつと切り」や「ふつふつと切り」と言ったりもする)。

「かのむげに息も絶えたるやうにおはせしが、引き返し、つぶつぶとのたまひしことども思し出づるに、心憂ければ…」(『源氏物語』:これも、切断動態を擬態で表現すれば「ぶつぶつ言う」になる)。

 

◎「つぶつぶ(2)」

「つぼふつぼふ(壺生壺生)」。壺(つぼ)を思わせるようなふっくらとした形状であること。

「いとよく肥えて、つぶつぶとをかしげなる胸を開けて、乳などくくめたまふ」(『源氏物語』)。