「つめひしいは(つ目ひし岩)」。「つ」は、一(ひと)つ、二(ふた)つ、など、個数を、単位における全体の中における規模を、確認表現するそれ。「め(目)」は、編(あ)み目(め)、繋(つな)ぎ目(め)、畳(たたみ)の目(め)、などのように、客観化した印象記憶の注意強度の強い何か、動態がそれとしてあることを識別明瞭にするなにか、を表現する。「つめ」は、全体における部分たるなにごとかがそれとしてあることを識別明瞭にするなにか。その「め(目)」が「ひし」となり全体が岩のように強固になっている。それが、「つめひしいは(つ目ひし岩)→つぶさ」。「ひし」は密着、圧迫、密集といったことを表現する擬態(→「ひし」の項)。「いは(岩)」は相当におおきな岩石を意味する(→「いは(岩)」の項)。この語は、全体が岩のように強固になっていることを表現することもあり、全体の一部をなす部分部分が識別明瞭に存在化していることを表現することもある。「つぶさに」が、前者の場合は、完全に、すべて整って、といった言い方もなされ、後者の場合は、詳しく、や、詳細に、といった言い方もなされる。後者は「つぶさに語る」や「つぶさに書く」といった言い方が多い。
「如來所説菩薩所傳(伝) 已來未來 一朝備(ツブサ)に集りたり」(『地蔵十輪経』:これは、全体が一丸一体となって完全に)。
「つふさに五行の徳を備へ」(「仮名草子」『浮世物語』:これも、全体が完全に)。
「焔の中にて焼け死ぬる人数を記いたれば大仏殿の二階の上には一千七百余人山階寺には八百余人ある御堂には五百余人ある御堂には三百余人具さに記いたりければ三千五百余人なり」(『平家物語』:これも、完全に全体を記せば)。
「乃(すなは)ち更(さら)に還(かへ)り登(のぼ)りて、具(つぶさ)に不降(あまくだりまさざ)る狀(かたち)を陳(まを)す」(『日本書紀』:これは、ひとつひとつ詳細に)。
「『…何時しか、まのあたりにて、具(つぶさ)なる御物語も申し賜はらむ、となむなげき申す…』」(『宇津保物語』:ひとつひとつ詳細丁寧な、心のこもった)。