◎「つび(𡱖)」

「つぼび(壺び)」(「つふび(壺び)」の可能性もなくはない。(「つふ(壺)」も「つぼ(壺)」もたぶん形は同じようなものだったでしょう))。「び」は「都び」その他のそれ。「ぼ」は無音化した。壺(つぼ)めいたもの(身体部分)、の意。女性身体の性器部分を言う。それを壺に比喩したわけです。

「玉門 ……女陰名也……通鼻(つび)」(『和名類聚鈔』)。

この「つび」は貝類の一種たるハマグリの隠語的俗称にもなっている。「はまぐり」は女性陰部を意味する隠語的俗称にもなっている(→「彌『お前(まへ)の蛤(はまぐり)ならなほ甘(あま)からう』ト女の尻をちよいとあたる」(『東海道中膝栗毛』))。ハマグリを意味する「つび」という語は、通常、巻貝を意味する「つび(螺)」の項で語られますが、そうではない。これは女性陰部を意味する「つび(𡱖)」。ハマグリがなぜ「つび(𡱖)」なのかといえば、二枚貝の接合部の形体印象でしょう。

 

◎「つび(粒)」

「つゆび(露び)」。「び」は「都び」その他のそれ。露(つゆ)のようなもの、の意。球状の小さなものを言う。

「他(ひと)の分(わき)を欲(ねが)ひ、己が物を惜むこと、流頭の粟の粒(つび)を粉(くだ)き…」(『日本霊異記』:「流頭(リウトウ)」は意味不明ですが、「龍頭(リュウトウ)」か? 音が似ていないこともない)。

「其の器(うつはもの)に付たる粒(つび)を取て食するに…」(『今昔物語』)。