◎「つばな(茅花)」

「つまはな(夫・妻花)」。「つま(夫・妻)」は、社会的人間的関係として、結ばれていると評価される関係にある男女において相手を言う。男から女も女から男も言う(後世では男から女のみを言うようになる)。「つばな」は植物名ですが、この植物は白く柔らかな密毛の花穂を出し、その綿毛のようなものを、「つま」どうしが共に寝る際の寝具として、袋状のものの中に入れ、後世の「フトン(布団)」の中綿のように利用して、用いられたことによる名。「つま(夫・妻)」がそれに包まれる花、という表現。その穂の綿毛のようなものを「はな(花)」と呼ぶことは植物学的に誤りではありませんが、むしろ、美称として付されている。「ちがや(茅)」の別称にもなる。

「茅花(つばな)抜く浅茅(あさぢ)が原のつほすみれ今盛りなり我が恋ふらくは」(万1449)。

「茅(ツバナ)ノ花(ハナ)ヲ服(キ)テ寒(サム)サヲ防(フセ)ギ」(『東大寺諷誦文稿』)。

 

◎「つばひらか(詳らか)」

「つまはひろやか(褄羽広やか)」。たたんでいた羽根を広げたようであること。すみずみまで広げられ内部が明瞭であること。「つまひらか」「つまびらか」にもなる。これは漢文訓読の世界で作られた表現です。

「詳 ツハヒラカニ」「委 ………ツハヒラカニ」(『類聚名義抄』)。

「又、歌のいつる(出る)ところもつまひらかならす(ならず)」(『後拾遺和歌集』)。