◎「つばめ(燕)」

「つめはまへ(爪羽舞へ)」。「つめ(爪)」は、人間のではなく、鳥などの爪。「つめは(爪羽)」は、その羽の形状が爪(つめ)を思わせるということ。「まへ(舞へ)」は「まひ(舞ひ)」の他動表現。舞わせるということ。「つめはまへ(爪羽舞へ)→つばめ」は、形状的に爪(つめ)を思わせる羽を舞わすもの、の意。この語は小形の鳥の名ですが、この鳥は空を舞ふ印象なのです。「つばめ(燕)」と「かまめ(鴎)」(→「かもめ(鴎)」の項)は命名の仕方が似ている。「つばくらめ」とも言う。

「燕(つばめ)来る時になりぬと雁(かり)がねは本郷(くに)偲(しの)ひつつ雲隠り鳴く」(万4144)。

「燕 訓豆波久良米(ツバクラメ) 或曰豆波米(ツバメ)」(『本朝食鑑』)。

 

◎「つばくらめ(燕)」

「つめはくろはまへ(爪羽黒羽舞へ)」。「つめは(爪羽)」は「つばめ(燕)」の項。「黒羽」は、この鳥の羽は鮮やかに黒い。「まへ(舞へ)」は「まひ(舞ひ)」の他動表現。舞はすこと。「つめは(爪羽)」「黒羽」を舞はせ飛ぶ鳥、ということです。鳥の一種の名。「つばめ」とも言う。

「𪈏 ツバクラメ」(『類聚名義抄』)。

「『つはくらめのす(巣)くひたらはつ(告)けよ』との給ふを」(『竹取物語』)。

 

◎「つばさ(翼)」

「つませは(褄背羽)」。この場合の「つま(褄)」は着物の衿(えり)の部分。その着物の衿のように背にある羽が「つませは(褄背羽)→つばさ」。鳥の羽根の、たたまれているときの印象です。鳥の羽根の、鳥の一部であることが強調された名称。

「天飛ぶや雁(かり)の翅(つばさ)の覆ひ羽のいづく漏りてか霜の降りけむ」(万2238)。

「翼 ……和名都波佐」(『和名類聚鈔』)。