◎「つなみ(津波)」

「チウにはみ(宙庭見)」。「宙(チウ)」は、地面から離れた空間、空中、を意味する→「(大きな猪が)乗りたる馬を主ともにちうにすくうて投げ上げ」(『曽我物語(寛永版)』)。「には(庭)」という語は(生活になじみのある)海、とりわけ海面、も意味する→「…潮騒の 波を畏み……いざ子ども あへて漕ぎ出む 庭(には:尓波)も静けし」(万388)。「チウにはみ(宙庭見)→つなみ」は、空中に海面を見ること、そうしたできごと、の意。海全体が、ときには見上げるほど高く、空中に浮かんだようになり、そして迫って来る。

この語の語源は、船着き場を意味する「つ(津)」による「津波(つなみ)」(そこは波が高くなるから)とするのが一般のようですが、意味として不自然でしょう。ちなみに、「つなみ」という言葉が一般化する以前はこの現象は「たかしほ(高潮)」と呼ばれていたでしょう。『源氏物語』の「須磨」に「『………』『高潮(たかしほ)といふものになむ、とりあへず人そこなはるるとは聞けど…』」という一文がある。

「一夜の内に大水いで、信玄公の諸勢、道具を津なみにひかれ候へ共、無何事」(『甲陽軍鑑』)。

 

◎「つなぬき(貫き)」(貫き)

「つなぬき(綱貫き)」。綱の状態で貫(ぬ)くということですが、「つな(綱)」は、二とあるものを常にともにある状態に、一とある状態に、するものであり、「ぬき(貫き)」とは、なにか自体を進行することであり、二とあるものを一とある状態になにか自体を進行する、とは、なにか(A)によってなにか(B)が隔てられともにある状態に、一とある状態に、なっていない場合、その隔てているなにか(A)自体を進行し(B)がともにある状態に、一とある状態に、なることが「(Aを)つなぬき(貫き)」。ともにある状態に、一とある状態に、なっていないのは(A)の両面域。たとえば、玉Aをつなぬくことにより玉の反対側両側面域がともにある、一とある、域になる。

「(銭二文にべつべつに印をつけこれを市で使い)商人(アキヒト)カ井トリツレバ(買い取りつれば)トカク傳(ツタハ)ル事数モシラズ。シカアレドモ其チキリ(契り)深(フカキ)ニヨリテ、夕(ユフベ)ニハカナラズ元(モト)ノ如ツナヌカレテ行合(ユキアフ)トイヘリ」(『発心集』「亡妻現身帰来夫家」:穴あき銭を紐などで貫きそろえるということだろう)。

「遠矢に射ける程にかくそん(人名)が膝ぶしをかせぎに(敵の守り手に?)射つなぬかれて、片膝ついて…」(『平家物語(長門本)』)。

 

◎「つなね」

「つなはなあへ(綱端和へ)」。綱(つな)で(柱状のものの)端(はな:もっとも端(はし)の部分)を合体させること、そうした部分。

「下(しも)つ綱根(つなね) 古語番縄之類謂之綱根」(『祝詞』「大殿祭」)。