◎「つつみ(包み・慎み・障み(動)・堤)」

「つていみ(伝て忌み)」。「つて(伝て)」は同動が経過することですが、「つていみ(伝て忌み)→つつみ」すなわち、同動が経過することを忌む、そうなってしまうことに動態が求心的に、環境へ向かわず、内へ向かい、とは、あるものやことを「うち(内)」の状態にし外(そと)と、環境と、同動経過しないようにする。その影響が及ばないようにする。それが「つつみ(包み・慎み・障み)」。

「白玉(しらたま:真珠)をつつみて(都都美氐)遣(や)らばあやめぐさ花橘(はなたちばな)にあへも貫(ぬ)くがね」(万4102:贈り物を表に現れない状態にする。ものをつつむ。「がね」はその項)。

「たらちねの母にも言はずつつめりし(褁有)心はよしゑ君がまにまに」(万3285:表に現さない心。ことをつつむ)。

「いとしのひたる女にあひかたらひてのち、人めにつつみて又あひかたく侍りけれは」(『後饌和歌集』詞書:人目に経過を生じさせたくない。人目との影響を生じさせたくない。見られたくない)。

「つつみ隠さず」(経過を生じさせることを忌み隠すことなく)。

「薮波(やぶなみ)の里に宿借り春雨に隠(こも)りつつむと(都追牟等)妹に告げつや」(万4138:環境的に自分という経過を生じさせず。自分を環境にあらわすことに求心的な動態になり)。

「…つつみなく(都都美無久)幸(さき)くいまして早(はや)帰りませ」(万894:環境的に自分という経過を生じさせないこと、自分を環境にあらわすことに求心的な動態になること(つまり、積極的に環境に働きかけることができない状態(病気や怪我などの障害)が起こること)、なく。簡単に言えば、病気や事故もなく、ということ)。

水の流れを内部に籠もらせ流出させない(水にとっての環境に積極的に働きかけることができないようにする)ための土地施設も「つつみ(堤)」という。「小山田の池のつつみ(都追美:堤)にさす柳(やなぎ)成りも成らずも汝(な)と二人はも」(万3492:この「さす(左須)」は、挿し木として地に挿(さ)すわけではなく、現れ・発生を表現する「さす(左須)」であり(「若葉さす野辺の小松を…」(『源氏物語』))、淡く、青やかな芽が現れ始めた柳、ということでしょう。一般には挿し木と解釈されている)。

 

◎「つづみ(鼓)」

「つつつつみ(筒包み)」。筒の中に何かが包まれた印象のもの、の意。打楽器の一種。古くは、後世で言う、太鼓(タイコ)、の総称。後世の和楽器の一つたる鼓(つづみ)は、細めの筒の両側が開き、この両側に革(かわ)が当てられ、その両側の革を緒で結び締める構造になっている。

「この御酒(みき)を醸(か)みけむ人は その鼓(つづみ(都豆美))臼(うす)に立てて 歌ひつつ…」(『古事記』)。

「鼓 ……和名都都美」「大鼓 ………和名於保豆豆美」(『和名類聚鈔』)。

「年寄りぬれば、その拍子の当て所、太鼓(たいこ)、歌、鼓(つづみ)の頭(かしら)よりはちと遅く足を踏み、手をも指し引き…」(『風姿花伝』)。

 

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