◎「つつじ(躑躅)」

「つつうつし(星映し)」。「ゆふつづ(夕星)」という言葉がありますが、それにより「つつ」が星を表現した→「ゆふつづ(夕星)」の項。この語は植物名であるが、「つつうつし(星映し)→つつじ」は、その「つつ(星)」を映したような花、の意。この花を上から見ると星形なのです。植物の一種の名。

「青山を ふりさけ見れば つつじ(都追慈)花 香(にほえ)をとめ 桜花 盛(さかえ)をとめ…」(万3309:万3305では「つつじ」は「茵」と書かれている。「茵(イン)」は敷物などを意味しますが、そのような印象で一面に咲くということでしょう。「躑躅(テキチョク)」は中国語名の表記をそのまま書いたもの)。

「水伝ふ礒(いそ)の浦廻(うらみ)の石(いは)つつじ(乍自)茂(も)く咲く道をまたも見むかも」(万185)。

「つつじ咲く かたやまかげの 春の暮れ それとはなしに とまるながめを」(『風雅集』)。

 

◎「つつしみ(慎み)」(動詞)

「つてひしいみ(伝てひし忌み)」。「つて(伝て)」は同動が経過すること(その項)。「ひし」は密着や凝縮を表現する擬態。「つてひしいみ(伝てひし忌み)→つつしみ」は、「つて(伝て)」を、他へ同動すること、他へ伝わること、を、「ひし」と、堅く、忌(い)むこと。自分の影響が環境たるものやことに及ばぬよう細心の注意をし努力する状態になる。自分の影響がそのものやことに及ばないようにするということは、及ぶことによりそれが壊れたり汚(けが)れたりし、その価値が損なわれることを避けようとする努力でもあり、また、環境にあるそのものやことたるなにかから影響を受けることを警戒しそうならぬよう努力する(つまり、環境に影響されぬよう自己を守り維持する)意にもなる。

「さるほどに、上(あが)るは三十四までの比(ころ)、下(さが)るは四十以来なり。…………ここにて、なほ慎(つつし)むべし。………この比(ころ)極めずは、この後、天下の許されを得ん事、返すがへす難(かた)かるべし」(『風姿花伝』:そのころは気が緩みがちな年齢なので、なにごとかが能の向上に悪影響が及ばぬよう、それまでに成し遂げた自己の能が崩れ廃れぬよう、気を緩めてはならない)。

「『伊予守の朝臣の家につつしむことはべりて、女房なむまかり移れるころにて…』」(『源氏物語』:伊予守の朝臣の家に、そこに居てはいけない(かかわってはならない)忌みごとがあって、そこの女房たちがいま私の家に来ている)。

「『落馬の相ある人なり。よくよくつつしみ給へ』」(『徒然草』:気をつけろ)。

「身をつつしむ」。「言葉をつつしむ」。