◎「つつが(恙)」

「つつきこは(突き強)」。皮膚に近い体の一部が突いて強(こは)ばったような状態になること。すなわち打撲傷。「麻柱に蹴(くゑ)つめられて、「必ずその身にもつつがいできにけむ」とぞ、人云ける也」(『今昔物語』)。

「つつがなく(つつが無く)」(何の障害も無く)は元来はこの「つつが」なのですが、「つつがむし(恙虫)」のことという誤解が相当に古くから広まっている。「つつがむし(恙虫)」は上記の「つつが」のような小さな跡を皮膚に残す虫、ということであり、元来は、どの虫という具体的な同定性はないでしょう。後世ではある種族のダニを言う。

「ことに触れて、わが身につつがある心地するも、ただならず、もの嘆かしくのみ、思ひめぐらしつつ…」(『源氏物語』:自分に故障や欠陥があるような思いもし)。

「無恙(ナシツヅガ) 恙螫人ヲ虫也(恙(つつが)は人を螫(さ)す虫なり)」(『節用集』(足利時代の写本))。

 

◎「つつき(突き)」(動詞)

「つきつき(突き突き)」。最初の「き」は消音化した。幾度も突くこと。「つっつき」とも言う。

「…しただみ(小さな巻貝)を い拾ひ持ち来て 石もち つつき(都追伎)破り…」(万3880)。