◎「つつ(筒)」

「うちふうつ(打ち節空)」。植物の「ふし(節)」が単に「ふ」と言われることがある。「真小薦(まをこも)のふ(布)の間(ま)近(ちか)くて…」(万3524)。「うちふうつ(打ち節空)→つつ」とは、節(ふし)を打ち抜いた空(うつ)ろなもの、すなわち、節を打ち抜いた竹です。節を打ち抜いた竹それ、そしてそのようなもの、が「つつ(筒)」。

「其竹の中に本光る竹なむ一すぢ有けり。あやしがりて寄て見るに。つゝの中ひかりたり」(『竹取物語』)。

 

◎「つつ(助)」

二番目の「つ」は完了の助動詞「つ」に同じ。何かと何かに空間的時間的同動・連動が生じる。→「つ(助動)」の項。問題は最初の「つ」ですが、これは作用が「つき(付き)」の「つ」と同じ。ここで思念が生きたそれとして活性化している。それがなぜ起こっているかと言うと、ただアクセントがあがることで起こっている。「つつ」では思念の活性化とその空間的時間的同動・連動が起こっている。具体的にどのようなことが表現されるかと言うと。「朝漕(こ)ぎしつつ歌ふ船人」(万4150:動態の並行)。「出でつつ来らく」(万755:出て行くことと来ることを同時に行っているような状態になる)。複数動態の並行進行が表現されることもある→「上達部・上人なども、あいなく目をそばめつつ」(『源氏物語』)。思念化した情況(A)における出来事(B)が情況(A)からの予想や期待と異なることが表現されることもある(つまり動態連動表現が逆説表現に利用される)→「(時鳥(ほととぎす)を)ひとり聞きつつ告げぬ君かも」(万4208:ひとり聞きながら(聞いているのに)私にはそれを告げないあなただ、まぁ…)、「そうは言ひつつ…」。「三島野に霞たなびきしかすがに(こんなこともあるのかと)昨日も今日も雪は降りつつ」(万4079:「しかすがに」はその項・2022年9月10日)―この歌は、雪は降りつつ→三島野に…→雪は降りつつ→三島野に…、と回転していくような表現になっている。そうなりつつ春へ向かうのでしょう。