◎「つたひ(伝ひ)」(動詞)

「つた(蔦)」の動詞化。「つた(蔦)」のような努力状態になること。蔦(つた)は他の何かに密着しつつ進行的に成長する。動態がそのようなものになること。

「春されば妻を求むと鴬の木末(こぬれ)を伝ひ鳴きつつもとな」(万1826)。

「君は、塗籠(ぬりごめ)の戸の細めに開きたるを、やをらおし開けて、御屏風のはさまに伝ひ入りたまひぬ」(『源氏物語』)。

 

◎「つたへ(伝へ)」(動詞)

「つたひ(伝ひ)」の他動表現。(有形無形の)何かのあり方を(空間・時間を経て進行する)「つた(蔦)」のようにすること。

「傳書送印:書を傳(ツタ)へ印(しるし)を送りて」(『地蔵十輪経』:物の占有者をAからBへ移動させる)。

「ややためらひて、仰せ言伝へきこゆ」(『源氏物語』:命婦が帝の言ったことを言い、聞かせた)。

「琴におきては女(むすめ)に傳ふ。女(むすめ)、仲忠(なかただ)に傳ふ」(『宇津保物語』:技術の習得者がAからBへ、BからCへと変化した)。

「つたへきく」。「つたへきこしめす」。

 

◎「つたはり(伝はり)」(動詞)

「つたへ(伝へ)」の自動表現。伝へた状態、「伝へ」の情況、になること。

「この唐櫃は上古より傳はりてその始をしらず」(『徒然草』)。

「情報がつたはる。」。「気持ちがつたはる」。「熱がつたはる」。