◎「つじ(辻)」

「つむじ」の「む」の無音化。「つむじ」は「ちふみふし(路踏み節)」。道行きの節(ふし:特異点)になるところ。丁字や十字など、路(みち)が交差しているところ。意味発展的に路(みち)や路傍(みちばた)も意味する。「つむじかぜ」の「つむじ(旋風)」(その項)とは別語。「辻󠄀・辻」は和製漢字(手書きのこの字は、右側が、数字の「十」ではなく、下が左へ向かってはねる。左上に点が二つある字と一つの字があるのは、シンニョウは、「道」なども含め、古くから点は一つで書かれていますが、20世紀以降、文部省字体が決められ、常用漢字などは一つになりましたが、旧字は二つになり、「辻󠄀」は旧字として二つにされた。また、字体も右側が「十」にされた。つまり、文部省が新しく作った旧字というような奇妙な字体になっているのが左上に点が二つある「辻」。点二つが正字とされたのは、中国の『康熙字典』でそうなっているからということでしょう。いずれにしても「辵(チャク)」の略体ですから、点は一つでもかまわない)。

「辻󠄀 ツムシ」(『類聚名義抄』)。

「十字 ……縦横十字成阡陌 今案十字者東西南北相各之道其中央以十字也 俗用辻󠄀字 都无之 未詳」(『下総本 和名類聚鈔』)。

「歌をよみてふだにかきて、壬生の辻󠄀に立てられける」(『古今著聞集』)。

 

◎「~っこ」

「イッカウ(一向)」。「(そんなこと)できっこない」などと言う場合の「っこ」です。すべての動向全体として、の意。「っ」はほとんど無音化し表記されないこともある。「『嘘事(うそつこ)だから是(これ)でも能(よ)いねえ、お秋さん』」(「滑稽本」『浮世風呂』:まつたく嘘なんだから)。

「『…そんなに自由こになるものかな、…』」(「洒落本」『妓情返夢解』:完全に自由になるものかな)。

「もう慣れっこ」。「あいつには敵(かな)いっこない」。「あんなやつにわかりっこない」。

・「隅(すみ)っこ」、「端(はじ)っこ」、「ぺしゃんこ」などという場合の「っこ」は、上記「イッカウ(一向)」による「いっこ」が俗用で程度のひどさ、まったく、まったくひどい、などを意味したそのさらなる俗用。

「『……、いつこ妙じやあつたせなァ』」(「洒落本」『北華通情』)。

「『…いつこ面倒(めんどい)なら放(ほ)つておかんせ。…』」(「滑稽本」『浮世風呂』)。

・「駈(か)けっこ」、「睨(にら)めっこ」、「ぶらんこ」、「取(と)り返(かへ)っこ」などと言う場合の「っこ」は別語であり、それにかんしては「ごっこ」の項。