「つくりおひ(作り覆ひ)」。「つくり(作り)」はなんらかの思念的内容を活性化させ現実化すること(5月8日)ですが、「おひ(覆ひ)」はその努力を全体に及ぼすこと。「つくりおひ(作り覆ひ)→つくろひ」は、全体を作りが生じている状態にすること。全体をなんらかの思念的内容の現れの状態にする努力をすること。もの(人体も含めて)にかんしてもことにかんしても言い、全体を整えることも言い、壊れたり不調になったりしたそれを修繕することも言う。靴下に穴があけば、こうありたい、と想う靴下の現実が現れるように、それを繕(つくろ)ひ、都合の悪い情況にまきこまれれば、こうありたい、と想う思念的内容が実現するように、うまくその場を取り繕(つくろ)ふ。

「城柵(きかき)を繕修(つくろ)ひ」(『日本書紀』:この場合「城(き)」は軍事施設であり、「城柵(きかき)」はそれを防衛する垣(かき)。これの不備を正し、さらには、さらに頑丈にする。つまり、戦闘準備です)。

「『儺(な)やらふとて、犬君(いぬき:人名)がこれをこぼちはべりにければ、つくろひはべるぞ』」(『源氏物語』:「儺(な)やらひ:鬼やらひ」を(遊びで)やろう、と言い、様々な道具(雛飾りの道具のようなものだろう)を出し、犬君(いぬき)がこれをこわしてしまい。「なおしてるの」と言っている)。

「『天下(あめのした)の麗人(かほよきひと)は、吾(わ)が婦(め)に若(し)くは莫(な)し。…………鉛花(いろ)も御(つくろは)ず、蘭澤(か)も加(そ)ふること無(な)し。…』」(『日本書紀』)。

「正月一日は……………世にありとある人は、みなすがたかたち心ことにつくろひ…」(『枕草子』:「みづくろひ(身づくろひ)」という語もある)。

「身ニアシキカサイテツクロヘトモヤマサリキ(身に悪しき瘡出で、つくろへども止まざりき)」(『三宝絵詞』:病変に対し、それが起こらない状態にしようと努めている)。

「『今朝より、悩ましくてなむ、え参らぬ。風邪かとて、とかくつくろふとものするほどになむ。…』」(『源氏物語』)。

「既(すで)にして兵(つはもの)を百濟(くだら)の家(いへ)に繕(つくろ)ひて、南門(みなみのかど)より出(い)づ」(『日本書紀』:兵を戦闘用に整えた)。