◎「つくよ(月夜)」

「つきけゐよ(月気居夜)」。つきくよ、のような音(オン)を経、「き」は無音化しつつ「つくよ」になった。月の現れている夜、の意。月の現れている夜を意味する「つきよ(月夜)」という語もある。

「ほととぎす此(こ)よ鳴き渡れ燈火(ともしび)を月夜(つくよ:都久欲)になそへ(準へ)その影も見む」(万4054)。

 

◎「つくよみ(月読」

「つきゆよみ(月ゆ世見)」と「つくよみひひ(月夜御響)」がある。「つきゆよみ(月ゆ世見)」は、「ゆ」は助詞であり、月から世(よ)を、時空世界を、見るもの(主体)こと。「つくよみひひ(月夜御響)」は「つくよ(月夜)」(その項)の神聖感・神秘感のある影響作用、のような意ですが、月夜の世界、すなわち、月光による世界に太陽光の世界にない世界を感じ、その影響作用を及ぼしている主体が思われ、その主体は月から世(よ)を、時空世界を、見るもの(主体)であり、それが「つくよみひひ(月夜御響)」であり「つきゆよみ(月ゆ世見)」であり「つくよみ」であり「つくよみのみこと月読命」。この語が多く「月讀(月読)」と書かれるのは、月の満ち欠けで日月(ひつき)を読んだ(判断した)からでしょう。

「於是(ここに)、左の御目(みめ)を洗(あら)ひたまふ時に、成(な)れる神(かみ)の名(な)は、天照大御神(あまてらすおほみかみ)。次(つぎ)に右の御目(みめ)を洗(あら)ひたまふ時に、成(な)れる神(かみ)の名(な)は、月讀命(つくよみのみこと)。次(つぎ)に御鼻(みはな)を洗(あらひたまふ)時に、成(な)れる神(かみ)の名(な)は、建速須佐之男命(たけはやすさのをのみこと) 須佐二字以音」(『古事記』)。

「天橋も 長くもがも 高山も 高くもがも つくよみ(月夜見)の 持てるをち水 い取り来て 君に奉りて をち得てしかも」(万3245:月読命のもとには「をちみづ(変若水)」と呼ばれる若返りの水があると思われていたらしい。月の満ち欠けで日月(ひつき)を読み、時間を支配しているような印象があったということか(その力で昔の自分に帰れるということ))。

「つくよみ(月讀)の光に来ませあしひきの山きへなりて遠からなくに」(万670)。

「つくよみ(月余美)の光を清み夕なぎに水手(かこ)の声呼び浦廻(うらみ)漕ぐかも」(万3622)。

 

◎「つぐら」

「ひつぐら(櫃倉)」。「ひ」の脱落。保温のために飯櫃(めしびつ)を納めておくもの。藁(わら)で編んで作る。保温になるので、冬になると赤ん坊を入れて寝かすこともある。