◎「つぐみ(噤み)」(動詞)

「つくくみ(唾含み)」。「くくみ(含み)」はその項。「つ(唾):唾液」を「含(くく)む」とは、唾液を浸出させこれを体内へ入れているような動態になることであり、意味は「つくひ(唾食ひ)」(5月5日)に酷似している。口を、口唇を、絞り閉じるような動態になり、「口をつぐむ」は、言葉を発しないこと、さらには、記憶していることを外部へもらさないこと、を意味する。

「斯りし後は君悪を積ども臣敢て不献諌(諌を献ぜず)、只群臣口を噤(つぐ)み万人目を以てす」(『太平記』)。

「噤 …トヅ ツクム」(『類聚名義抄』)。

 

◎「つくもがみ(九十九髪)」

「つくももおふかみ(付く百追ふ(逐ふ)髪)」。「もも(百)」(その項)は数字単位の100。「おふ」は追跡の意の「追(お)ふ」と駆逐の意の「逐(お)ふ」の二重意になっている(→「おひ(追ひ・逐ひ)」の項・2020年11月08日)。付(つ)く百(ヒャク)を逐(お)ふ、付(つ)く百(ヒャク)を追ひ払ふ、とは、それが付くと「百」になるなにかを追い払うということであり、そのなにかとは、「百」の字の上についている横棒であり、それは数字の「一(イチ)」でもあり、数字のそれを払うと色名の「白」になる。つまり、「付(つ)く百(もも)逐(お)ふ髪(かみ)」は、「白」の髪(かみ)、ということであり、白髪(ハクハツ)を意味する。また、付(つ)く百(ヒャク)を追(お)ふ、とは、それがつくと「百」になるその百(100)を追うということ、百歳を追う、ということであり、象徴的に、長寿を意味する。つまり「つくももおふかみ(付く百追ふ(逐ふ)髪)→つくもがみ」は、白髪(ハクハツ)であり、長寿が約束された髪を意味する。「九十九」という表記は「百」から「一」を取ると「白」だから。

草類の一種フトイ(太藺)を別名「つくも」と言いますが、これは「つきふみおひ(突き生水生ひ)」か。湿地や水地に細く鋭い印象のものが突き刺すように伸び群生するもの。

「ももとせに一とせたらぬつくもかみ われをこふらしおもかけにみゆ(百年に一年足らぬつくもがみ 我を恋ふらし面影に見ゆ)」(『伊勢物語』)