◎「つくひ(噤ひ)」(動詞)の語源

「つくひ(唾食ひ)」。口、とりわけ口唇、の状態が唾(つ:唾液)を絞り出し食っているような印象の動態になること。これは口を堅く閉ざした状態になり、言語を発しない状態であることも表現する。

「高市縣主許梅(たけちのあがたぬしこめ)、儵忽(にはか)に口閉(くちつくひ)て、言(ものい)ふこと能(あた)はず」(『日本書紀』)。

「緘 …ツツム トツ(閉づ)…ツクフ ユフ」(『類聚名義抄』)。

 

◎「つくほり」

「とうきほり(鋭浮き彫り)」。「ほり(彫り)」が自動表現で用いられている。痩せ、衰弱し、骨が浮き出る状態になる。『万葉集』の歌にある表現。一般的な表現ではない。

「やくやくに(少しづつ)容貌(かたち)つくほり(都久保利)、朝な朝な(朝ごとに)言ふこと止み……」(万904:少しづつ少しづつ顔は骨が鋭く秀でるようにやせ、朝ごとに朝ごとに何も言はなくなり……)。