◎「つくば(筑波)」

「つくば(木菟羽)」。山の形状が木菟(つく・4月26日)が羽ばたき羽を広げた形を思わせることによる。山の名。この語は古代の国名にもなっている。

「妹が門(かど)いや遠そきぬ筑波山(つくばやま:都久波夜麻)かくれぬほどに袖は振りてな」(万3389)。

「古老答曰。古者(いにしへ) 自相模国 足柄岳坂(あしがらのさか)以東諸縣 揔稱我姫国(あづまのくに)。是當時不言常陸(ひたち)。唯稱新治、筑波(つくば)、茨城、那賀、久慈、多珂国。各遣造別(みやつこわけ)令撿挍(をさめしむ)」(『常陸風土記』)。

「新治(にひばり)筑波(つくば)を過ぎて幾夜(いくよ)か寝つる」(『古事記』歌謡26)。

 

◎「つくばひ (蹲ひ)」(動詞)

「つくみはひ(突く身這ひ)」。「~はひ(這ひ)」は動態情況になることですが、「つくみはひ(突く身這ひ)→つくばひ」は、「つくみ(突く身)」の情況になることを表現する。「つくみ(突く身)」の情況になるとは。たとえば、地や床に直立していたとする。その上半身が直立のまま地を突(つ)くように降りる。そんな姿勢です。そんな姿勢になることが「つくみはひ(突く身這ひ)→つくばひ」。茶道において、中潜(なかくぐり:露地(茶室周囲の庭のようなところ)にある潜り戸のような施設)において待つ客、迎える亭主は「つくばう」。その内露地にある手水鉢(ちょうずばち)を「つくばひ」という。手をすすいだりする際、そうした姿勢になるところ、ということ。

この「つくばふ」が、上半身が額が地にふれるほど前へ倒れれば(当然、手を地につき)、「はひつくばふ(這ひ蹲ふ)・はひつくばる」になるわけですが、「つくばひ」が、突く身で地を這ひ、のような用い方がなされ、「つくばひ・つくばり」(「つくばる」は関西方面の言い方らしい)が「はひつくばふ・はひつくばる」と同じ意味で用いられることもある。「イヤ、汝らがつくばふて居る所は白犬に其まゝじや」(「狂言」『ふたり大名』)。