◎「つくし(土筆)」

「つけゐふし(付け居節)」。取り付けたような印象の節(ふし)のあるもの、の意。より原形的には「つくづくし(つけゐつけゐふし・付け居付け居節)」(節(ふし)のようなものが幾つもある)と言う。「つくし」はその「つくづくし」の省略表現。植物の一種の名。

「蕨、つくづくし、をかしき籠に入れて…」(『源氏物語』)。

「天花菜 土筆 ツクヅクシ」(『書言字考節用集』(1717年))。

「野に出づれば、田の畔(くろ)は土筆(つくし)、芹(せり)、薺(なづな)、嫁菜(よめな)、野蒜(のびる)、蓬(よもぎ)なんど簇々(そくぞく)として…」(『自然と人生』「彼岸」徳富蘆花(昭和14(1939)年))。

 

◎「つくし(筑紫)」

「とひきふし(門引き伏し)」。「と」は、この場合は海路で、進行に閉鎖的な圧力が感じられる地形部分であり、「みなと(港:水な門)」などにもなっている「と(門)」。「とひきふし(門引き伏し)つくし」は、その「と(門)」が引きのばされ、その内部が伏した状態に、特定な域に、なっている印象の地形部分の地、の意。後の福岡県・福岡市の博多港海域あたりの地形印象による名。これがそのあたりの地名となり、地域名として拡大もしていった。後の博多湾周辺や福岡あたりを漠然と表す地域名。『古事記』のいわゆる「島生み」ではこの「つくし」が九州全体を表す総称の状態になっている。しかしそれは「つくし」の地域的個別的特性によるものではない→「おほやまととよあきづしま」の「島生み」の項。

「次(つぎ)に筑紫嶋(つくしのしま)を生(う)みき。此(こ)の嶋(しま)も亦(また)、身(み)一(ひと)つにして面(おも)四(よ)つ有(あ)り。面(おも)毎(ごと)に名(な)有(あ)り。故(かれ)、筑紫國(つくしのくに)…豐國(とよくに)…肥國(ひのくに)…熊曾國(くまそのくに)…」(『古事記』)。

「大君の 遠(とほ)の朝庭(みかど)と しらぬひ 筑紫の国に 泣く子なす 慕ひ来まして…」(万794:「しらぬひ」はその項(2023年1月24日))。

「かのわか君(玉鬘)の四つになる年ぞ、筑紫へは行きける」(『源氏物語』)。