◎「つき(漬き)」(動詞)
「つけ(漬け)」の自動表現。→「つけ(漬け)」の項。
◎「つけ(漬け)」(動詞)
「ひちゆけえ(漬ちゆ気得)」。語頭の「ひ」は退行化した。「ひち(漬ち)」は、(特に布が)水がしたたるほどひどく、濡れていることを表現する。「ゆ」は経験経過を表現する助詞。「ひちゆけえ(漬ちゆ気得)→つけ」は、濡れたことによる気(け)を得る。濡れることによりそのものが内的にそうなり、そうなったものから感じられる気(け)を得る、ということ。その場合、「得(え)」は自動表現なのですが、たとえば「Aを水に漬ちゆ気得→Aを水につけ:Aを水で浸透的に濡れた状態にし」と言った場合、「つけ」はAを水の中へ入れたり水を含んだ状態にすることを意味する他動表現になる。自動表現の、たとえば「豆が水に漬ちゆ気得→豆が水につけ」は、豆が自分で水に入り自分をふやかしているような表現になり、現実における事実上、起こらない。この他動表現「つけ」が成熟し、そこから自動表現「つき(漬き)」も生じる。たとえば「漬物をつけ」「漬物がつき」。この自動表現「つき(漬き)」は水に入ったり水に濡れたりすることも意味する。
「つけ(漬け)」は、単にそう言っただけでも水にいれることは表現されますが、単なる水以外のなにかに入れることも多く、たんに「つけ」ではなく「水につけ」と言われることが多い。この水が、塩気であれなんであれ、なんらかの味がついており、つけられた、たとえば大根、にそれが浸透すれば、それは食べ物たる「つけもの(漬物)」になる。
(他動表現)
「潮滿瓊(しほみちのたま)を漬(つ)けば、潮(しほ)忽(たちまち)に滿(み)たむ」(『日本書紀』:潮滿瓊(しほみちのたま)を海水につける)。
「漬けたる蕪(かぶ)」(『宇津保物語』)。
「漬 …ヒタス ツク…ウルフ」(『類聚名義抄』)。『類聚名義抄』の「沉」の右上に点のある字に「シツム ツク」の訓みがある。「沉」は「𣲽」の正字であり「沈」と同字。
(自動表現)
「『ヤレきのどくな。ゑらい(ひどく)はたけへ水がついたは』『とんだ事いふ人だア。あれはしのはずのいけといふべんてんさまだはなア』」(『やました八景』)。
「『そんなら五分づけを出しんせうか…』……『(容器の蓋をあけてみて)ウウ、こいつはよくついた』」(「洒落本」『傾城買四十八手』)。
◎「つかり(漬かり)」(動詞)
「つけ(漬け)」の自動表現。活用語尾がA音化・情況化しそうした情況にあることが表現されている。「つけ(漬け)」の情況になること。「水に浸(つ)かる」。「漬物が漬(つ)かる」。
・動詞「つき」には「つき(付き・着き)」(4月19日)、「つき(尽き)」、「つき(突き・築き・吐き)」(上二段活用)(4月20日)、「つき(漬き)」があるということです。