◎「つかみ(掴み)」(動詞)

「ていきはみ(手行き噬み)」。手が進行しその手で何かを噬(は)むような動作をすること。「はみ(噬み・食み)」はその項。

「恋は今はあらじと吾は思へるをいづくの恋ぞつかみかかれる」(万695)。

「握 ……ツカム」(『類聚名義抄』)。

「翁のいふやう。『御むかへにこむ人をば。ながきつめしてまなこをつかみつぶさん。…………』と腹立おる。かぐや姬云。『………』」(『竹取物語』)。

 

◎「つかまり(掴まり・捕まり)」(動詞)

「つかみはり(掴み張り)」。「はり(張り)」は情況を現すこと。「つかみはり(掴み張り)→つかまり」は、「つかむ(掴む)」という動態を情況化して現す、ということですが、たとえば、「私は木の枝につかまり」と言った場合、よほどの特殊な情況下にないかぎり、「私」は木の枝をつかんでいる。しかし、「私は警官につかまり」と言った場合、警官の社会的働きが前提になっており、警官が「私」をつかんでいる。しかし、「私」が警官の身体をつかみ、穴に落ちることをとっさに防ぐことが「私は警官につかまり」になることもある。なぜそうしたことが起こるかというと、「はり(張り)」という語が、活用語尾R音の効果により、動態が客観的な情況として現れることを表現し、その動態の主体が「私」であろうと「木の枝」であろうと「警官」であろうと表現されるからです。これは漢字を利用して書き分けがなされたりもし、警官の場合、前者は「捕まり」、後者は「掴まり」と書かれたりもする。

「世上の評判、楽屋のもてなし、取わけ女中の贔屓つよく、雷蔵雷蔵とはやし立て、………鳴る雷(かみなり)はこはがれども此雷はかはゆがり、抓(つか)まれたがるも多かりき」(「談義本」『根無草(根南志具佐)』)。

 

◎「つかまへ(掴まへ・捕まへ)」(動詞)

「つかみいははえ(掴み磐端得)」。つかみ(掴み)、磐(いは)の一端を得た、という表現。強固な確保感を得てなにかを掴(つか)んだわけです。そうした動態を表現したもの。何かを確定的強固さをもって、しっかりと、把握した、の意。「つかみ(掴み)」はその項。

「頸ヲ掣(ツカ)マヘ胸ヲ掣(ツカ)マヘ、功徳ヲシ修シテハ、自然ニ善キ所ニハ生レム」(『東大寺諷誦文稿』(『東大寺諷誦文稿注釈』(小林真由美)))。

「頭をつかまへられて体を動かすこともならない」。