「つぎカウ(次ぎ香)」。仮名表記は「つがう」とも書かれる。たとえば、香(カウ)が燃え尽き、それにより生活が安泰になっている香りがなくなってしまう予感があったとする。そんなとき、それがどういう方法によってかは不明だが、「次(つ)ぎ香(カウ)する(香がさらにつづけて燃えくゆるようにする)→つがふする」。それが燃え尽きた、あるいは、燃え尽きそうだったとする。それがどういう方法によってかは不明だが、「次(つ)ぎ香(カウ)をつける(点火する)→つがふをつける」。香は常に燃え尽きる不安をかかえており、たまたま起こったなにごとかが自動的に消えそうになった香にさらに点火する効果があれば、「次(つ)ぎ香(かう)(の見通し)が良(よ)い→つがふが良い:次ぎ香がうまく進む状態になると思われる」。漢語の「好(カウ)」を添えて「好都合(カウつがふ)」。そうでない場合、「つがふが悪い」。つまり、「つぎカウ(次ぎ香)→つがふ」は、香(カウ)を次(つ)ぐことでもあるが、今焚かれているその香(カウ)ではなく、予想され期待される次(つぎ)の香(カウ)でもある。

「都」は『廣韻』に「總也」とも書かれる字であり、すべてを一に集める、という意味でももちいられ、全体を集め合わせて、という意味の「都合(ツガフ)」という中国語があり(「父子五人、并に多田ノ蔵人大夫頼憲、都合二百餘騎にて固めたり」(『保元物語』))、これは、事情全体を総合して、結局、といった意味にもなる。上記の「つがふ」は慣用的に「都合」と書かれることが非常に多く、語源はこの漢語とすることが一般です。しかし、「都合のいいように言う」は、全体を合わせた結果としていいように、全体を総合化した結果になるように、言うのではなく、自分の香りが絶えないように言う。

「どふぞどふぞぼんまへには(盆前には)御つがふあそばし、せめて七十両ばかり御つかひくだされかし」(「黄表紙」『孔子縞于時藍染』)。

「水うり『ナニサ、お前さんがた、是(これ)でもお天気都合が悪いと、休みが勝ちますからネ、やつぱり引合(ひきあひ)ません…』」(「滑稽本」『浮世風呂』)。

「 上手より道具屋善六……小田原提灯を點(とも)し出(いで)来る

甚兵(駕籠かき)『へい旦那。御都合まで参りませうか』

善六『いやいや、駕籠に乗つちやあ居られない』」(「歌舞伎」『夢結蝶鳥追(雪駄直)』)。

「けふいつちやあ(今日結っちゃあ)都合(つがう)がわるひけども」(「洒落本」『傾城買四十八手』)。