◎「つがひ(継がひ・番ひ)」(動詞)

「つぎあひ(継ぎ合ひ)」。対象相互が同動し(継ぎ)全的完成感を生じた状態になること(合ひ)。組みになること。「つ」の同動感に関しては「つれ(連れ)」その他の項。「つぎ(継ぎ)」にかんしてはその項。他動表現も自動表現もある。「番(つがひ)の鳥」は雌雄揃い全体的完成感のある鳥。雄と雌のある生物は雌雄がそろっていることを「つがひ」という。名詞「つがひ」は双方の骨が完成的に動態的同動感が生じている、組になっている、部分、すなわち関節、も意味する。「籠手(こて)のつがひ」のように、いろいろにもののつなぎ目も意味する。時期と時期のよいつなぎ目はよい機会(「明日は一戦の良きつがひ」)。意思と意思、言葉と言葉を「(詞を)つがふ」ことは約束を意味しますが、矢を弓につがふ(別語「つがひ」の項)、の意の「(詞を)つがふ」もある。

「うちはらふ友なきころの寝覚めには つがひし鴛鴦(をし)ぞ夜半に恋しき」(『紫式部日記』)。

「草を縛(ツガ)ヒて坐に作る応(べ)し」(『小川本願経四分律古點(『訓店語と訓点資料 別刊第一』(大坪倂治:訓点語学会編))』:これは他動表現。草を完成感のある状態でくみあわせる、ということ)。

「…千世にも 偲ひわたれと 万代に 語(かた)りつがへと(語都我部等)…」(万3329:この「つぎあひ(継ぎ合ひ)→つがひ(その命令形)」は、組になること、ではなく、主体相互が継ぎ合ふ、みなでつなぎあって後世へ伝えていく)。

 

◎「つがひ」(動詞)

「つけかひ(付け支ひ)」。同動させその同動に交感を生じさせる、すなわち、それを維持する、こと。「矢を弓につがひ」は、矢を弓に動態同動させそれを維持すること。銃で言えば、装弾すること。「雁股(かりまた:武具の一種)をつがひ」という表現もある。それを相手にかけた状態にすること。この語は外渉的に活用語尾はE音化し「つがへ」にもなる。

「与一鏑を取つてつがひ、よつぴいて、ひやうとはなつ」(『平家物語』)。

「弓矢取りはいささかの所でも、思ひ出の詞(ことば)をば、かねてつがゐをくべきで候ける物かな」(『平家物語』:この「つがゐ」はこの項でのそれ(詞をいつでも発射できる状態にしておけ、ということ。別項「つがひ(継がひ・番ひ)」のそれ、すなわち約束する、の意ではない)。

「細川右馬頭は三好長慶に詞つがひし事なれば、勝負を一時に決せんと…」(『安宅一乱記』)―この「つがひ」は別項「つがひ(継がひ・番ひ)」のそれであり、約束する、の意)。