◎「づかづか(1)」

「づけづけ」の語尾がA音化・情況化して生まれている語。意味は、連続が連動する情況にあること。「サアづかづかと言うた言うた」(『万戸将軍唐日記(まんごしょうぐんもろこしにっき)』)。「づかづかと家へ上がり込む」。この語の表記が「ずかずか」に向かいやすいのは「す」のS音による動態感によるものでしょう。「放駒が内へ来てずかずか物を吐(ぬか)したら、何奴(どいつ)も此奴(こいつ)も手足を捩(もぐ)ぞ」(「浄瑠璃」『双蝶蝶曲輪日記(ふたつちょうちょくるわにっき)』)。

 

◎「づかづか(2)」

「づか」は、「でひかば(出、引かば)」。語頭はE音I音の連音がU音になり、語尾は濁音が退行化しつつ「わ(は)」になりつつ無音化した。づかは→づか、ということ。「づかづか」は、「でひかば、でひかば(出、引かば、出、引くかば)」ということであり、出(で)、引いたら、出(で)、引いたら、出(で)…が繰り返されるということ。何が出て何が引かれるのかというと、鋸(のこぎり)です。つまり、この語は鋸(のこぎり)でなにかを切っている際の動作を表現する。この語は鋸(のこぎり)でなにかを切っている際の擬音や擬態のように思われていますが、そうではなく、その動作を動詞で表現した文。「ずかずか」とも書く。これは「ず」の持続的動感の影響によるものでしょう。江戸時代でもこの語を擬音や擬態のように思うことが起こっている。

「『…のこぎりをもつてきた。……さあらばきらふ』づかづかと二つきるまねする」(「(虎明本狂言)」『連歌盗人』)。

「物をきり侍るを……………すかときるはすかすかときるといふこころにや。すかすか速(すみやか)の文字歟。はやくきる心成べし。それを濁(にご)りてずかずか、ずか、ずつかなどといふは如何侍らん」(『かたこと』(1650年):つまり、「ずかずか」を擬態や擬音と思っている人が違和感をおぼえている)。