◎「つ(箇)」

「とゐ(と居)」。「と」は思念的に何かを確認する助詞。「ゐ(居)」は存在を表現し、「あり(有り)」です。「とゐ(と居)→つ」は、個数を、単位における全体の中における規模を、確認表現する。「一(ひと)とゐ→ひとつ(一つ)」、「二(ふた)とゐ→ふたつ(二つ)」、「三(み)とゐ→みつ(三つ)」…。「いほつしま(五百つ島)」などと言う場合の「つ」は同動(帰属)を表現する助詞(下記)。

「…真玉(またま)なす 二(ふた)つ(布多都)の石を…」(万813)。

「…一つ松(ひとつまつ:比登都麻都) 人にありせば…」(『古事記』歌謡30)。

 

◎「つ(助)」

T音の思念性(思念性とは想念作用)とU音の遊離感のある動態感により、何かと何かに空間的時間的同動・連動が生じる。たとえば「AつB」により「Aたる(とある)B」が表現される。「あまつかみ(天つ神)」、「ほつえ(上つ枝)」、「ときつかぜ(時つ風)」、「おきつしらなみ(沖つ白波)」その他。たとえば「ときつかぜ(時つ風)」の場合、それは思念的に時(とき)とある風(かぜ)、時たる風、であり、時(とき)を得た風(かぜ)、時(とき)の風(かぜ)、のような意味になる。

「天(あま)離(さか)る夷(ひな)つ女(め)の…」(『日本書紀』歌謡3)。

「浜つ千鳥(波麻都知登理) 浜よは行かず 磯伝ふ」(『古事記』歌謡38)。

「…大伴(おほとも)の遠(とほ)つ神祖(かむおや)のその名をば…」(万4094)。「しこつおきな(醜つ翁)」(万4011)。

「あまつかみ(天つ神) くにつかみ(国つ神)」。「うちつみや(内つ宮) とつみや(外つ宮)」。「おきつなみ(沖つ波) へつも(辺つ藻)」(万1206)。

「ゆふつかた(夕つ方)」。「をとつひ・をととひ(一昨日)」。「さきつとし(先つ年)」。