◎「つ(津)」
「ちふ(路節)」。「ち(路)」は、なにかに目標感も生じるなにかとの同動進行、その同動進行関係にある空間域を表現する(→「ち(路・道)」の項・2月24日)。「ふ(節)」は、特異的に感覚感のあるそれ、対象として独立化する存在感のある発生感、を表現する。この場合は特異的に感覚感のあるそれが対象として独立化し存在感が生じている(「(竹の)節(ふし)」にある「ふ」。「真小(まを)薦(ごも)の節(ふ)の間(ま):布能末」(万3524))。「ちふ(路節)→つ」、すなわち、なにかに目標感も生じるなにかとの同動進行、その同動進行関係にある空間域(路)の特異的に感覚感のあるそれ(節)、とはどういうことかというと、路(ち)における路(ち)と路(ち)の接点なのです。路(ち)の質が変わる。その点において海路(水路)が陸路に、陸路が海路(水路)に、変る。これは海路(水路)の中継点にもなり得る。陸におけるそうした地点域。それが「つ(津)」。川の船着き場なども言い、意味発展的には、陸路のそれ(中継点域であり人も集住したりしている)が言われたりもする。その地点域は、いわゆる「と(門)」といわれるところの、自然防波堤に守られ波も穏やかになっている地点域が選ばれることがほとんどです。古代で言えば薩摩・坊津(ぼうのつ)、筑前・博多津(はかたつ)、伊勢・安濃津(あのつ)など。
「故(かれ)、其(そ)の國(くに)より上(のぼ)り行(い)でましし時(とき)、浪速(なみはや)の渡(わたり)を經(へ)て、青雲之(あをくもの)白肩津(しらかたのつ)に泊(は)てたまひき」(『古事記』:「あをくもの(青雲之)」の「あを」は後世で言われる色名たるそれではなく、生まれたばかりの、のような意味のそれであり(→「あを(青)」の項)、そうした雲は輝くように白く美しく、この枕詞は「しろ・しら(白)」にかかる。また、それは湧き出るように今あらわれ、「あをくもの出(い)で」(万3519)と言われたりもする)。
「津 ………和名豆 渡水処也」(『和名類聚鈔』:この語は「居処部」の「道路類」にある)。
◎「つ(唾)」
唾液で濡れて発する口中音による擬音。口中に分泌する液、唾液、を意味する。「つばき(つはき(唾吐き))」、「つば(唾):唾端」、とも言う。
「唾 ………和名豆波岐 口中津也」(『和名類聚鈔』:「口中津也」は、口の中では「津(つ)」という、ということでしょう)。