◎「ちりばみ(塵ばみ)」(動詞)

「ちりばみ(塵ばみ)」。「ばみ」は「気色ばみ」その他のそれ(「~ばみ」にかんしてはその項)。「ちりばみ(塵ばみ)」は、塵(ちり)が「~ばみ」の状態になる。塵がつもっているというほどではないが、塵で薄汚れている。

「硯きたなげにちり(塵)ばみ、すみ(墨)のかたつかたに、しどけなくすりひらめ」(『枕草子(能因本)』)。

「台盤(食器類をのせる足付台)なども、傍(かたへ)は塵(ちり)ばみて、畳、ところどころ、ひきかへしたり(裏返してある)」(『源氏物語』)。

 

◎「ちりばめ(鏤め)」(動詞)

「ちりビうはみえ(散り美上見え)」。「み(見)」は外的知覚に対する意思動態の進行であり、「みえ(見え)」は対象に対する自発的自動表現であるが、「Aを見え」と表現した場合、Aの状態で見える動態になり、他者に対しては、「Aを見せ」と同じ意味になる。「ちりビうはみえ(散り美上見え)→ちりばみ」は、散る、周囲に散乱する、美(ビ)を、美しさを、「うは(上)」に、表面(外的)印象として、見せる、すなわち、美しく飾る、という意味になる。そしてそれは上に、表面に、現れ、その発生源は埋め込まれている。すなわち、何かを彫ったり、そこに、宝玉であれ金銀であれ、何かを埋め込みそれが環境へ向かって美しく現れる。それが「ちりばめ」。

「金をもて眼精を鏤(チリハメ)、銀をもて歯を帖(たた)めり」(『白氏文集』天永四(1113)年点)。

「鏤 チリハム…鍍 同」(『色葉字類抄』)。

「地ごくのあるじ熖魔大王こそ、王の冠を着、石の帯をし、金銀を鏤(ちり)ばめ、當(あたり)も輝く躰と聞きて有しが…」(「狂言」『朝比奈』)。