◎「ちゃんぽん」
「長崎ちゃんぽん」など、「―ちゃんぽん」と言われる、料理名の「ちゃんぽん」です。「ちゃににっぽん(茶に日本)」。「にっぽん(日本)」は国号。「茶(ちゃ)」という語には、適当な、いい加減な、という意味がある→「ちゃ(茶)」の項。この料理は、麺は中華そば系を思わせる麺が基本ですが、具材に蒲鉾系のものが入ったりもし、スープも鰹出汁、昆布出汁系のものも利用され、中国系麺類料理のような日本系麺類料理のようなものができあがる。「ちゃににっぽん(茶に日本)」は、適当に、いい加減に日本風だが、中国風か?と思わせる料理ということ。ちなみに、「ちゃんぽん」と「皿(さら)うどん」の違いは、「ちゃんぽん」は汁に浸っており、「皿(さら)うどん」は浸っていない(タレがかかっている)。違いはそれだけでしょう。
以上は料理名の「ちゃんぽん」なのですが、それとは別に、調和せず一体化に違和感のある複数、とりわけ二、が秩序なくまざりあう、という意味の「ちゃんぼん」もある。これは「ちゃん」は鉦(かね)、「ぽん」は鼓(つづみ)の音の擬音であり、それがでたらめに連打される騒ぎによるものでしょう。料理名の「ちゃんぽん」がこの語で考えられることは多いのですが、料理名のそれは調和に違和感のある複数、とりわけ二、が無秩序にまざりあっている、という意味ではない。
「芸者の滑稽、チリツンテン、ちやんぽんの大さわぎなど…」(「洒落本」『花街鑑(さとかがみ)』)。
「『そんなら、川流れの佛だね』『川流れも川流れ。首を縊(くく)つて身投げだ。死目ちやんぽんに張つた佛だ』」(「歌舞伎」『鬼若根元台(―ぶたい)』:これは、首を縊(くく)つて死亡した死体を川に流すということであり、縊死と水死がちゃんぽんになる、ということ)。
◎「ちょ」
「ちひを」。「ちひ」は「ちひさ(小)」のそれ→「その項」。「を」は状態を表現する。「ちひを→ちょ」は動態自体の(その影響結果の)小ささ(弱さ)を表現する。ほんの少しや微(かす)かであること。それが「と」で思念的に確認されれば「ちょと(ちょっと)」(「ちょとだけ食べてみる」。呼びかけの「ちょっと」もこれ)。「い」の進行感を表現すれば「ちょい」(「ちょいとそこまで」などの「ちょい」であり、「ちょいちょいあること」(よくあること)などの「ちょい」ではない)。情況感と目標感を表現する「ろ」を表現すれば「ちょろ」(小(ちひ)さく、弱い(その影響力の小さい)動態がある。「ちょろちょろ」と連音すればその動態が多数あったり連続したりする→「ちょろちょろ走り回る」)。
「コリヤ半兵衛。走りの出刀庖丁よふ磨(とが)して置いたぞや。ちよいと触つても剣じやぞ」(「浄瑠璃」『心中宵庚申』)。
「ちょイちょイ(ちょ慰ちょ慰)」。「ちょ」はほんの少しや微(かす)かであること(→「ちょ」の項)。「イ」は「慰」の音(オン)ですが、意味は、なぐさめること、やすめること。「ちょイちょイ(ちょ慰ちょ慰)」は、少しやすめて少しやすめて、ということであり、動態や事象がそれが休止することが少しありつつ連動、連続すること。「ちょくちょく」に意味は似ている。
「ちょいちょいといぢくる」などのそれは些少の意の「ちょい」(その項)の連音。
「そういうことがちょいちょいある」(頻繁にある)。
◎「ちょくちょく」
「ちょキウちょキウ(ちょ休ちょ休)」。「ちょ」はほんの少しや微(かす)かであること(→「ちょ」の項)。「ちょキウちょキウ(ちょ休ちょ休)→ちょくちょく」は、ほんの少し休(やす)みほんの少し休(やす)み、ということであり、動態や事象がそれが休止することが少しありつつ連動、連続すること。似た語で「ちょいちょい」(「そういうことがちょいちょいある」)がある。意味は「しょっちゅう(しよつちう)」(「あいつはしょっちゅう外で遊びあるいてる」)に似ている。
「鯉太郎さまもちよくちよく爰(ここ)へお出(いで)なされた」(「人情本」『恩愛二葉草』)。
◎「ちょう(蝶)」
→「てふ(蝶)」の項。昆虫の一種の名。