◎「ちちんぷいぷい」
「チンチンフイフイ(珍珍不意不意)」。「ぷ」は連半濁。「珍(チン)」は、珍(めづら)しい、めったにない、貴重、という意味がある。「不意(フイ)」は、思いがけず、思いになく、ということ。全体の意味は、珍(めづら)しい、めったにない、貴重なものやことは思いがけず、そうなるとは思ってもいないまに、ということ。「ちちんぷいぷい、御代(ごよ)の御宝(おんたから)」と呪文のようなことを唱えながら予想もしなかった所から予想もしない物を取り出して見せ、子供を驚かせ喜ばせたという。つまり、これは子供の関心をひくための、呪文のような語なのです。子供が転倒などし、どこかを打ち、痛みで泣いたりしている場合、母親などが、この呪文のような語で子の関心をひきそれに集中させつつ患部を撫でてやり痛みを忘れさせるということもある。その場合には、この呪文に続き「痛いの痛いの飛んでけ」が言われたりもする。
「勝手のいい方をむいてチチンプイプイ御代(ごよ)の御宝(おんたから)と何(なに)か咒文(じゆもん)をとなへると、向(むかふ)の方へ蛍があらはれる」(『八笑人』)。
「ちちんぷいぷい御代の御宝 小兒を誘ふ兒語」(『俚言集覧』)。
◎「ちなびに(因に)」
「ちならび(路並びに)」。あるあり方のことと同時進行で、の意。「動態(A)連体形ちなみに…」の場合(→「ちなみ(因み)」の項)、Aに均質に、という表現なのですが、「ちならび(路並びに)→ちなびに」は、なにごとかAと並行的に同時進行してなにごとかBがある。しかし、「ちなびに」も「ちなみに」もどちらも均質的なことの動態や動態情況の進行にもなり、ただ濁音か清音かの違いだけという状態にもなる。この語は漢文訓読系の世界で生まれた表現である印象が強い。
「外道凶人 此石を軽(あなづ)り踏むときは 池中龍王 便(チナビニ)風雨を興す」(『大唐西域記』長寛元年点:意思を軽(あなづ)り踏むことと均質的に龍王が風雨を興すわけではない。踏むと同時並行進行的に風雨が起こる)。