◎「ちから(力)」
「といかるうら(利(鋭)い駆る裏)」。「と(利(鋭))」は、存在感(その作用・影響・効果)が累進的に増していく印象を表現する。非常に効果的であったりする→「と(利・鋭)」の項。「い」は代名詞のようなそれ→「い」の項、それ、のような意。「と(利(鋭))」は、上代特殊仮名遣いにおける、甲類であり、この「とい」は「と」の語尾音が退行化しつつ「ち」になるでしょう。「かり(駆り)」は、『あれは…』と何かを思う(想う)ことが情況的に現れる動態情況になること(→「かり(狩り・駆り)」の項)。なにものかやなにごとかを追い立て追跡するような状態になる。「といかり(利(鋭)い駆り)」は「と(利(鋭))」なる「い」を「かり(駆り)」、であり、「かる」はその連体形。つまり、「といかる(利(鋭)駆る)」は、作用・影響・効果が累進的に増していくそれを追跡する情況になる、の意。「うら(裏・心)」という語は 存在・現れを生じさせているその経過(発生源)、その存在・現れの中枢的奥、のような意→「うら(裏・心)」の項。つまり、「といかるうら(利(鋭)駆る裏)→ちから」は、作用・影響・効果が累進的に増していくそれを追跡する情況の現れを生じさせているその経過(発生源)、その存在・現れの中枢的奥。つまり、作用・影響・効果を累進的に増していくその源(発生源)。もたらされる効果は、物体の移動、人の心情変化、社会的影響・変化など、さまざまです。
「汝(いまし)、膂力(ちから)人(ひと)に過(す)ぎたり」(『日本書紀』:お前はほか人よりも力がある、と言っている。その力でなにをするかというと、「三諸の丘の神」をとらえるという)。
「出で立たむちから(知加良)をなみとこもりゐて君に恋ふるに心どもなし」(万3972:「心(こころ)ど」は、心の強さ、しっかりした心)。
「おほかたのもてなし(それで世間体は保たれる一般的な待遇)は また並ぶ人なかりしかば こなたに(こちらに)力ある心地して慰めしだに(慰められはしたがそれでも) 世には心もゆかざりしを…」(『源氏物語』)。
「今は世末になりて国の力も皆衰へたればその後はつひに造られず」(『平家物語』)。
「物を持ち上げるちから」。「読むちから」。「聞くちから」。「慰めちからづける」。「困難に陥っていた彼のためにちからになる」。「その事業の成功のためにちからを尽くす」。
◎「ちがや(茅萱)」
「ちごかや(乳児茅)」。「かや(茅)」は屋根を葺(ふ)くにもちいる草。「ちご(乳児:「稚児」とも書く)」は原意は乳幼児ですが、ようするに幼いちいさな子。「ちごかや(乳児茅)→ちがや」は、その稚児(ちご)がその小さな家を葺くに使うような草、の意。これは草の一種の名ですが、これの葉も屋根を葺くことに使えはしますが、他の薄(すすき)その他に比べてちいさい。白い柔らかな密毛の花穂を出し、その花穂を「つばな(茅花)」とも言う。
「白茅 チガヤ ツパナ …」(『大和本草』)。