◎「ち(路・道・方)」

「つい」。「つ」は何かと何かとの空間的時間的同動・連動を表現する助詞(時つ風、先つ年)。「い」は直線的進行感を表現する。たとえば、「家(いへ)つい」は、家への進行を表現し、それがそれ(家に帰る進行・目標のある進行)を現実化する空間関係を表現した。その関係にある(土地も含めての)空間―それが「いへつい(家つい)→いへち(家路)」。つまり、「つい→ち(路・道)」は、そのなにかに目標感も生じるなにかとの同動進行、その同動進行関係にある空間域を表現する。濁音化した「ぢ(路・道)」は「ちち」。音の連続は持続・継続・連続を表現する。現実として見えるそれは「みち(見路・道)」。この「みち(道)」という語は、一般に、「ち(路)」に慎みや敬いを表現する「み(御)」のついた語といわれる。

この「ち」は、目標感をもった進行を表現することから、方向も表現する→「あち(彼方)」「こち(此方)」「そち(其方)」「いづち(何処方)」。

「大坂(おほさか)に逢(あ)ふや娘(をとめ)を道(みち)問(と)へば直(ただ)には告(の)らず當藝麻(たぎま)路(ち:知)を告(の)る」(『古事記』歌謡78)。

 

◎「ち(茅萱)」

「ちがや(茅萱)」の語頭一音。「あさぢ(浅茅)」(その項)や「ちがや(茅萱)」(その項)により「ち」が固有名詞と思われたことによるもの。

「茅 ………和名智」(『和名類聚鈔』)。