◎「たんぽ」

「タンパウ(端包)」。棒の先(端)を綿で包(くる)みこれを革や布で包む。これで槍の練習をしたりする(その槍を「たんぽやり(たんぽ槍)」と言う)。拓本でたたくように墨をつけるものも形状が似ていることから「たんぽ」と呼ばれる。郷土料理に「きりたんぽ」というものがあるが、それは、北陸辺りの方言に袖(そで)を意味する「たんぽ」があり(これは「てアンポウ(手安包)」だろう)、飯を素材にしたその形状が切った袖「きりたんぽ(切り袖)」に似ている。

「ト大拍子になり、向うより細内、中間にて、たんぽ付きの稽古槍を担ぎ…」(「歌舞伎」『霊験曽我籬』)。

 

◎「たんぽぽ(蒲公英)」

「たんぽんぽん」。「たん」も「ぽん」も鼓(つづみ)の音の擬音。これは草性の植物の名であるが、これをもちい子供が鼓(つづみ)を打つ真似をし『たんたん、ぽんぽん』と言ったことによる名。これは一般によく言われている説であり、そういうことだろう(※下記)。黄色い花が咲いた後の、球状の綿毛のような、種子穂(ほ)(球状冠毛)が印象深い植物。

「たんほゝはわらひ(蕨)手のうつ鼓かな」(『野犴集』)。

「蒲公英 たんぽゝ ……和名不知菜 一云太菜 俗云太牟保々」(『和漢三才図絵』(1712年成立):タンポポの古くからの名は「ふぢな(不知菜)」。この語頭の「ふ」は何かを吹く呼気の擬音であろう。その球状の綿毛のような、種子穂(ほ)(球状冠毛)を誰もが吹き、綿毛を風に飛ばす。「ぢな」は「ちちな(乳菜)」。「ちち(乳)」は、この植物は傷つくと白い乳液が滲みでるから。「な(菜)」は食用植物を言うが、この植物の若葉は食用になる。「たな(太菜)」は「てはな(手葉菜)」か。「て(手)」は方向を意味し、まるで(矢印で)方向を指し示しているような形の葉のもの、の意)。

(※) タンポポの茎をある程度の長さで切り取る。両端を幾本かに裂く。これを水につけておく。すると裂いた部分が外側へ丸まるように反る。それを鼓(つづみ)にみたてる。