◎「たるき(垂木)」
「たれゐき(垂れ居木)」。棟(むね:屋根の頂上線)から垂れるように設置される屋根勾配にそってのびる材。
「欀 ……和名太流岐……波閉岐 在檼旁下垂也」(『和名類聚鈔』:「波閉岐(はへき)」は「延(は)へ木(き))」か、屋根斜面に沿って延(は)はす木)。
◎「たるひ(垂氷)」
「たれゐひ(垂れ居氷)」。「たれ(垂れ)」という動態状態にある「ひ(氷:こほり)」の意。後に言う「つらら(氷柱)」。「たれ(垂れ)」はその項。
「朝日さす軒のたるひは解けながらなどかつららのむすぼほるらむ」(『源氏物語』:これは打ち解けない相手への思いを言ったものですが、古くは、池の表面などに張る氷を「つらら」と言った)。
「たちぬるる 山のしづくも おとたえて ま木のした葉に たるひしにけり」(『新古今和歌集』)。
◎「たるみ(垂水)」
「たれゐみ(垂れ居水)」。「み」は水(みづ)のこと。「たれ(垂れ)」という動態状態にある「み(水:みづ)」の意。水流の、水が落下状態になっている部分を言う。「たれ(垂れ)」はその項。
「石(いは)つつむ(石激)垂水(たるみ:垂見)の上のさわらびの萌え出づる春になりにけるかも」(万1418:一句の「石激」は、いはそそぐ、や、いはばしる、と読まれますが、『類聚名義抄』の「激」に「激水」と書きその横に「ツツム」と書く読みがあるので、そう読んでおく)。