◎「たむざけ(甜酒)」
「たまゆざけ(玉揺酒)」。玉が揺れるような酒。酒の美化表現。良い酒。
「其(そ)の田(た)の稻(いね)を以(も)て、天甜酒(あめのたむざけ)を釀(か)みて嘗(にひなへ)す」(『日本書紀』)。
「𨣌酒 …………多無佐介…酒味長也」(『和名類聚鈔』)。
◎「たむら(党)」
「たまうら(玉心)」。(人にあるところの。つまり人と人が)玉のように一つとなる心。
「一曰(ひとつにいはく)。和(やはらか)なるを以(も)て貴(たふと)しとし、忤(さか)ふること無(な)きを宗(むね)とせよ。人(ひと)皆(みな)黨(たむら)有(あ)り。亦(また)、達(さと)る者(ひと)少(すくな)し…」(『日本書紀』:いわゆる「十七条の憲法」のその一)。
「我が国の八人、同じく一つの洲(しま)に住む。儻(たむら)として観音菩薩の像を得て信敬尊重す」(『日本霊異記』)。
◎「たむろ(屯)」
「たまうらを(玉心男)」。玉のように(一丸となって)群がり固まる心の男。「たむら(党)」という言葉がありますが(上記)、その男(を)です。軍兵の群れ、また、群れること、を言う。また、それが駐屯している地も言う。後には、何らかの一体感が感じられる複数の人々が群れている状態も言い、そうすることを「たむろし(屯為)」とも言う。
「時(とき)に皇后(きさき)、親(みづか)ら、斧鉞(をのまさかり)を執(と)りて、三軍(みたむろのいくさ)に令(のりごと)して曰(のたまは)く…」(『日本書紀』)。
「されば昔、覇陵(ハリョウ:中国の地名)の李将軍と云ける大将、敵国に赴て陣を張り旅(たむろ)を調(ととの)へて、単于(ゼンウ:敵大将の名)と戦を決せんとしけるに…」(『太平記』)。
「太い奴だ。「ユスリ」同然な事をいふ。屯(たむろ)へ訴へて出るがいゝト頻(しきり)に八釜(やかま)しくいひましたけれども…」(『内地雑居未来之夢』(1886年):この「たむろ」は少人数の警官が常駐的にいるところ)。