◎「たまひ(嘔ひ)」(動詞)
「たわみはひ(撓み這ひ)」。動態が撓(たわ)む情況になること。嘔吐発作を表現したもの。吐くこと。
「子麻呂(人名)ら、水(みづ)を以(も)て飯(いひ)送(す)く。恐(おそ)りて反吐(たまひいだ)す。中臣鎌子連(なかとみのかまこのむらじ)、嘖(せ)めて励(はげま)しむ」(『日本書紀』:「送(す)き」は「すき(造き、鋤き…)」の項。緊張のあまり嘔吐した)。
「TAMAI,―AU タマフ 吐 t.v. To vomit ; i.q. haku」(『改正和英語林集成』)。
◎「たまふり(魂生り)」(動詞)
「たま(魂)」はその項参照。「ふり(生り)」は感覚的発生感を表現し(→「ふり(生り・振り・遊離り)」の項)、「たまふり(魂生り)」は、発生の動態感が生じた(感づかれる)情況が進行すること。やる気、意欲、生命活動力が生じること。名詞「たまふり」という神事もある。「ふり(生り)」は自動にも他動にも作用し、「たまふり」は共感的なものになる。
「「魂(たましひ)は朝夕(あしたゆふべ)にたまふれど(多麻布礼杼)我が胸痛し恋の繁きに」(万3767:この「たまふれど」は、「たまへ(給へ)」の已然形であり、いただくが、のような意になりますが(これはこれ以前に幾度もこの歌を届けた相手から歌が届いていることが前提になっている歌)、しかし、「たまふり(魂生り)」との二重意にもなっているでしょう(この「ふり(生り)」は自動表現))。
「天皇(すめらみこと)の爲(おほみため)に招魂(みたまふり)しき」(『日本書紀』)。