◎「たはら(俵)」
「つつわはら(筒輪腹)」。語頭の「つ」は退行化した。筒(つつ)状になった輪(わ)に腹(はら)状のもののついたもの、の意。つまり、輪(わ)があり、それが筒(つつ)状に延び、その輪(わ)に腹(はら)状のものがついている。腹状のもの、とは、平たいものであり、ここの部分は「サンだはら(棧俵)」と言われる。この棧俵(さんだわら)が筒の両端につき、内部になにかが入り、その状態でその何かの輸送や保管がなされる。その何かの最も代表的なものは米ですが、豆や芋などである場合もあり、炭であることもある。これに米が詰められ、さらにはそれが積み上げられている情況は豊かさの象徴にもなり、「福俵(フクだはら)」と言われ、縁起物にもなる。
「俵 タハラ」(『色葉字類鈔』)。
◎「たはれ(戯れ)」(動詞)
「たは(呆)」の動詞化。「たは(呆)」はその項(12月13日)。呆れた状態になること。「たはむれ(戯れ)」に意味は似ている。性的なことや男女のことで言われる傾向が強い。
「…人(ひと)の皆(みな) かく迷(まど)へれば 容艶 縁(よ)りてぞ妹(いも)は たはれて(多波礼弖)ありける」(万1738:これは、上総(かみつふさ)の珠名娘子(たまなおとめ)なる女の伝説というか、伝えられている話というか、それを歌にしたもの。「容艶」は読みが問題になり、かほよきに(顔良きに)、かほにほひ(顔薫ひ)、たちしなひ、といった読み方がなされますが、この読みは、すがたえに、か。万1913その他、「容儀」を、すがた、と読む例は多くある。「えに」は「艶(エン)」の音(オン)の古代表記による読みであり、言っていることは、「すがたゆゑに(姿故に)」であり、その見た目、姿だけで多くの男はひかれこれとたはれる、ということ)。
「(父たる大臣は)公(おほやけ)ざまは(公務の方面は)、すこしたはれて、あざれたる方なりし。ことわりぞかし(まぁ、たしかにそうなるのももっともだ)」(『源氏物語』)。
「秋来れば野辺にたはるる女郎花(をみなへし)いづれの人か摘(つ)まで見るべき」(『古今和歌集』)。