「たちゆき(立ち行き)」。生活が立(た)ち行(ゆ)かなくなる、などと言う場合の、「たちゆき(立ち行き)」。すなわち、生活の成立、その方法。生活が立ち行くこと、その方法。「たち(立ち)」は何かを表現し、この場合は人の社会的発生、社会的存在、「いき(行き)」はその進行であり、社会的存在の進行がある、とは、世の中で生活できており、それを維持する仕事がありそれを行っているということ。「たつぎ」という語もあり、これは「たつききき(たつき効き)」であり、ことをなすに効果的なこと、ということでしょう。

「元はやむごとなき筋なれど、世に経(ふ)るたつ(徒)きなく、時世にうつろひて、おぼえおとろへぬれば…」(『源氏物語』)。

「あるもの、子を法師になして、学問して因果の理をもしり説経なとして世わたるたつきともせよ、といひけれは…」(『徒然草』)。

「老(おい)たる母と妻子をも養育(はぐくまん)手次(たつき)にもと住みなれし都を離れ…」(『根無草(根南志具佐)』)。

「此地に活計(たつき)もとむとて親子三人(みたり)が旅衣」(『たけくらべ』樋口一葉)。

 

この語は、一般に、「たづき」(11月15日)と同語とされており、辞書などでは同じ項目に書かれわかりにくくなっている(同じ項目に双方の用例が混じったりしている)。