「ふたつ(二つ)」の動詞化。語頭の「ふ」は退行化した。似たような動詞のできかたとしては、「~ごと(言・事)」→「~ごち」というものがある。「ひとりごと(独り言)→ひとりごち」、「まつりごと(祭り事)→まつりごち」。「ふたつ(二つ)」の動詞化の意味とは、一(ひと)つを二(ふた)つにすること。一を二にすること。これは、(一とあるなにかを)切(き)る、という意味にもなり(布を裁つ)、切り離す→何かを切り離す、という意味にもなる(酒を断つ、関係を絶つ)。

「馬屋なる縄(なは)断つ(たつ:多都)駒(こま)の後(おく)るがへ妹が言ひしを置きて悲しも」(万4429::「後(おく)る」は、あとから行く、あとから追っていく、の意。厩に縄でつながれたようになっている妹が(その縄を断ち切るように)、かならず後から行く(必ず後から行きこそすれほかではない)、と言った、それを…。「がへ」はその項(2021年6月1日)。これは防人の歌)。

「おぼろかに 心思ひて 仮言(むなごと)も 祖(おや)の名絶(た)つな 大伴(おほとも)の 氏(うぢ)と名に負へる 大夫(ますらを)の伴(とも)」(万4465)。

「夏影(なつかげ)の房(ねや)の下(した)に衣(きぬ)裁(た)つ我妹(わぎも) 心(うら)設(ま)けて 我がため裁(た)たばやや大(おほ)に裁(た)て」(万1278:この「房(ねや)」は、「をねや(小房)」であり、前音の母音の影響により「を(小)」が表記されていなのではないでしょうか。今はつつましい小さな生活だが、これから二人は大きくなるんだぞ、という歌。これを「つまや(妻屋)」と読む例が多いようですが、「房」の読みは普通「ねや」であり、「妻屋(つまや)」という語は「枕(まくら)づく妻屋」と表現されるような語であり、そこで服を作り、それを少し大きくしろ、は歌意として意味不明)。

「五穀断ちて、千餘日に力を盡(つく)したること少なからず」(『竹取物語』)。