◎「たしやか」

「たしよはか(足し世努果)」。「はか(努果)」は努力成果(その項)。「たしよはか(足し世努果)」は世(よ)を充足させる努力成果。つまり、世が求める不足を満たす努力成果。

「この比(ころ:12、3才のころ)の稽古やすき所を花にあててわざを大事にすべし。はたらきをもたしやかに、音曲をも文字にさはさはとあたり、舞をも手を定めて大事にして稽古すべし」(『風姿花伝』一 十二、三より:つまり、意味深い何かを表現しようなどとは思わず技術を大事にすべきだ。はたらきたる効果は世を足し、技術を覚え、磨き、身につけ、自分のものにしろ、ということ)。

「此の上は、左近の尉を某と思召し、諸事御頼みましませと、さもたしやかには言ひけれど…」(「浄瑠璃」『藍染川』)。

 

◎「たすき(襷)」

「てはすき(手斜着)」。「はす(斜)」はその項。手の動作のため胴に斜めに装着する(着る)紐状のもの。それにより袖をあげ手の動作をしやすくする。古代においては、手作業の便だけではなく、扱う重要なものに衣服が触れ間違いが起こることのないようこれを装着したかもしれない。

「しろたへの たすき(多須吉)を掛け まそ鏡 手に取り持ちて…」(万904)。