◎「たけだけし(猛々し)」(形シク)
「たけし(猛し)」の語幹が二音重なった形容心情表明。いかにも「たけ(猛)」だということであり、勇猛果敢であることも言いますが。「たけ(猛)」による効果過剰な印象も表現されている→「盗人(ぬすっと)たけだけしい」(盗人でありながら、委縮した申し訳なさ、悪事への反省的心情、などなく、自己を意味や価値あるものとして存在作用させている)。「たけ(猛)」は「たき・たけ」の項(9月28日)参照。
◎「たけち(高市)」
「たかへつい(高竈)」。「へつい(竈)」は「かまど(竈)」のこと→「へっつい(竈)」の項。竈のように高くなった地形部分。『古事記』の歌謡101にある表現。
「倭(やまと)の このたけち(多気知)に 小高(こだか)る 市(いち)のつかさ(都加佐)…」(『古事記』歌謡101:この「つかさ」は貢物の嵩(かさ)という意味のそれでしょう→「つかさ」の項)。
◎「たけなは(酣)」
「たけにあは(丈に「吾は…」)」。「たけ(丈)」は「たけ(発生け・長け)」であり(→「たき・たけ」の項)、この場合は事象の発生情況、その、事象として続き発展したある情況。たとえば、酒席たる宴会で、それが全体高揚的に続き発展していたある瞬間、ふと、我に帰ったように、「吾(あ)は…」と思う瞬間がある。それが「たけにあは(丈に「吾は…」)→たけなは」。つまり、宴などの盛り上がりの絶頂。ふと、その高揚の衰化を予感させるその瞬間。宴の高揚の最終完成段階。それが「たけなは」。
「『酒(さけ)酣(たけなは)の後(のち)に、吾(われ)は起(た)ちて歌(うた)はむ。汝等(なむたち)、吾(わ)が歌(うた)の聲(こゑ)を聞(き)きて則(すなはち)一時(もろとも)に刺虜(あた)を刺(さ)せ』」」(『日本書紀』)。
「酒ノタケナワナト云ハヨイカラアカツキマデモノウテ(飲んで)ハヤ吾人モクタビレマタラニ(斑(まだら)に?)ラツシモナウナツタ(らっしもなくなった)コロスギタヲ云ソ」(『玉塵抄』:「ラッシ」は「臘次・臈次」(ラフジ)と書かれるそれであり、出家後の先輩後輩順のようなもの。さらに転じて、ものごとの順序、秩序)。
「宴もたけなは」。